第139話 憎しみが生むもの⑰
これからの方針も決まったところでまずは東南口の方向に制圧を開始する。とにかく今やるべきことはこの敵に挟まれているという状況を打開することだ。そのために東南口方向は確保しておきたい。
がれきが散乱していることによって通路が相当狭くなっているといえどそれでも射線はそこそこ通っている。敵に見つからないようにがれきからがれきを慎重に行動していく。
隠密行動では人数が少ないほうが戦いやすいため今は俺と高宮2曹以外の隊員は敵精鋭部隊がこっちに来ないか通路の入り口で見張っている。もしこっち側に来るようならすぐにでも駅の外に退避しないとならない。今の俺たちではあのレベルの部隊と正面からやりあったら間違いなく粉砕される。
そしてもう一つがれきを移動したところで前から敵の話し声が近づいてくる。敵はどうやら2人。十分に対応できる数だ。俺たちのすぐそばに来るまで息をひそめて敵を待つ。
そして敵が俺たちの横を通りかかろうとしたその瞬間、俺は一人の敵を物陰に引きずり込んで声を上げる間もないうち首にナイフを突き立てて殺す。一方、高宮2曹は敵に肘を打ち付けるとよろめいた敵の顎下にサイレンサーのついた拳銃を突き立ててそのまま射殺する。
とても洗練された動きでまるで敵が高宮2曹に合わせて動いているんじゃないかと思うほどだ。どうにせよ、これで東南口方向の敵を始末しきった。
高宮2曹が腕で敵を見張っていた隊員に合図を送って集合させる。
「これから1、2番線ホームと3、4番線ホームを制圧します」
さっき俺たちが挟まれたのは15、16番線のホームにいた敵部隊が2階に上がってきたせいだ。同じことを起こさないためにも今回はまず自分たちが背にすることになる階段につながるホームを制圧する。
「ホームの制圧は別部隊がやるのでは?」
「さっき俺たちが挟まれたのはホームを確認しなかったからです。それを防ぐためにはこうするしかありません。もしそこで敵がいなかったら憂いも消えますし、別部隊と会えば協力して制圧してしまっても別に問題ありません」
ほかに質問もないみたいなので俺たちは早速1、2番線ホームに下ってクリアリングをしていく。階段を下りきると遠くから戦闘をしている音が聞こえてくる。どうやら弓削さんたちは15、16番線のホームから制圧を始めているみたいだ。となると俺たちはここのクリアリングをすぐに済ませて敵を挟むような形にしたい。
丁寧にクリアリングしていく必要はないのでざっと見て敵がいないことを確認してから今度は3、4番線のホームに降りる。先ほど隣のホームから見たところこのホームには敵が少数いるようなので警戒して周囲を見渡す。
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