第138話 憎しみを生むもの⑯
本当はこのまま敵と交戦せずに東南口まで行って高宮2曹たちと合流したいが、さすがに敵を躱し続けることはできない。こうなると絶対通らなければならないところにいる奴だけを殺して移動するしかない。
とにかくまずタイミングを計る。敵が近くにいない瞬間に階段を飛び出して遮蔽物となりそうな自販機の後ろに隠れる。そこから周りを見てみるとどうやら高宮2曹も近くまで来ているようでこちらから確認することができる。本当ならこのまま合流してここから撤退して立て直したいが、弓削さんや蒼葉君と同時に攻撃を仕掛けなければならないことを考えるとそれも厳しい。
ただ今はどの程度隊員が残っているのかさえ分からない状況だ。まずは安全なところで合流してどうするか決めるべきだろう。
そして東南口方向の状況だがどうやらそこでは爆発があったらしく天井もいたるところで崩落しており通路にはがれきが散乱している。ただ完全に道がふさがれるような崩落は起きていないみたいなので通ることはできるだろう。
まず俺に近づいてきた敵に物陰から飛びつき首にナイフを突き立てて殺す。これでとりあえず近くには敵がいなくなったため今度はがれきがあるところまで移動してがれきの後ろに隠れる。
そして同じように敵がいないところをすり抜けてきた高宮2曹たちが合流する。
「大丈夫でしたか?」
「何とか。たださっきの攻撃で多くの隊員と連絡が取れなくなった」
高宮2曹が言うように彼についてきている部下の数は5人しかいない。はじめは15人ほどの隊員が参加していたことを考えると相当な被害が出ている。
「一度引いて立て直すことを進言するよ」
「…いや、それはできません」
「なぜだい?すでに戦闘が継続できるような状況じゃない!」
「これは自分たちだけの作戦じゃないんです。もし俺たちだけが撤退したら敵の戦力が残りの2つに集中してしまう。そしたらいくら精鋭でも突破することは難しくなります」
「…それでも無理なものは無理だ!自分たちがそれでつぶれたら意味がない」
「まずはステルスキルで数を減らしていきましょう。幸いこのがれきが多い場所なら、隠れる場所も多くて人数振りが覆りやすい」
「…わかった。だが、無理だと思ったらすぐに撤退をする」
「それでいいです」
とりあえずこのまま作戦を継続させる方向でどうにかまとめることができた。実際直属の部下の多くを失っている高宮2曹の気持ちもわかるが多少の犠牲が出たとしても優先するべきは作戦の達成だ。
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