第137話 憎しみが生むもの⑮

俺は急いで13、14番線のホームにつながる階段に駆け込んで敵から隠れる。しかし、隊員全員がそうやってすぐに安全な遮蔽物に隠れることが出できるわけじゃない。数か所から銃撃戦をしている音が聞こえ、そしてすぐにそれが聞こえなくなる。


もし自衛隊員のほうが勝っているのだとしたら敵の人数を考えるともっと時間がかかっていないとおかしい。…とにかく今やるべきことはどうやって立て直すかだ。


『誰か、聞こえている方はいますか?』


敵に見つからないように小さな声で囁くように無線に問いかける。


『高宮だ。こっちは何とか』


『どうなってますか?』


『今は3人の隊員と11、12番線の階段に隠れている。ほかの隊員についてはわからない』


『わかりました。敵に関しては何かわかりますか?』


『どうやら新たに出てきた敵部隊は装備が相当強力なようだね。戦闘になった隊員がすぐに殺された』


『わかりました。それなら東南口のほうで合流しましょう。とにかく敵には見つからないようにしてください』


『わかったよ』


新たに登場した敵部隊の装備は強力なようだし、それに隊員がすぐに殺されたということは腕も相当いいのだろう。となると東南口のほうに展開している敵のほうがまだ戦いやすい。


とにかく今はもう一度全員で集まって態勢を立て直すことが必要だ。俺は階段からそっと顔を出して周囲の状況を確認する。どうやら敵は俺たちがどこに行ったのかわかっていない様子で、いるはずもないところを丁寧にクリアリングしている。


俺は見つからないように階段から抜け出すと11、12番線のホームにつながる階段に隠れる。ここは高宮2曹が隠れていた階段とは反対側にあるもので、高宮2曹がいるところと比べていると周囲が開けていて隠れにくい。


とにかく俺は近くにいた敵構成員が目を離したすきにそこから離れてもう一つ先の階段に身を潜ませる。ここまで来るとどうやら敵は俺たちがいることを想定していないようで監視の目が緩くなる。


そしてまたタイミングを見計らうと俺は階段から出て次の階段へと向かう。


しかしその時、先ほどの階段の位置からだと店舗に重なってしまっていて見えなかった位置から敵が出てくる。ここで見つかって戦闘になるわけにはいかない。すぐそばにあった敵が出てきた店舗とは違う店舗に飛び込む。


息をひそめて隠れているとどうやら敵は俺に気づかなかったようでそのまま俺の目の前を通り過ぎていった。


敵をやり過ごした俺は次の階段に移動する。ここから先は通路が狭くなっているため非常に敵との接敵率が高くなる。さらに慎重に行動していく必要がある。

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