第130話 憎しみが生むもの⑧

『こちら剣持、瀬霜さん聞こえますか?』


『なんだい?』


『これから俺たちは非常階段を使うためにいったんビルの外に出るので誤射しないように気を付けてください』


『了解だよ』


瀬霜さんへの連絡を済ませてから俺たちは登ってきた階段を下ってビルの外を目指す。ここに到達するために殉職した仲間たちの遺体をここから今すぐに出すことはかなわないが、彼らの警察手帳だけは回収しておく。


敵はもうすでに殲滅しきっているので下るのにあまり時間はかからない。すぐにビルの外に出ると裏口の近くにあった非常階段を上り始める。


ここにもブービートラップがある可能性を考えてゆっくりと登っていくが、特にそのようなものも見つからない。8階に行くためにはこの階段を使わないといけないので普段からこの階段を敵も使っているのかもしれない。


何事もなくすぐに8階までたどり着く。先頭にいた弓削さんが扉を開くのに合わせて俺を先頭に8階に侵入する。


俺たちが侵入したところは廊下のようで突き当りに1つだけ扉がついている。今度は俺が扉を開けて俺の後ろにいたSATの隊員を先頭にして入っていく。


部屋に入るとそこはいわゆる社長室のような見た目になっていて、テロ組織の施設には見えない。しかし、机の上にはパソコンが開いたままで放置されており、急いでここから抜けだしたように見える。


「剣持、こっちに来てくれ」


パソコンの画面を見ていた弓削さんが俺のことを呼ぶ。


「どうしたんですか?」


「これを見てみろ」


そこに映っていたのは新宿駅とその周辺の地図だ。地図にはところどころに赤い点が付けられており、その近くにはそれぞれ違った数字が降ってある。


「新宿駅の地図みたいですけどこれがどうしたんですか?」


「こっちも見てくれ」


そこに映し出されたのは襲撃の計画書のようなもの。それには番号とそれに対応する部隊の名前のようなものが書いてある。


「これは…」


「おそらく、新宿駅襲撃の計画書だろう。そして決行日は…」


弓削さんが画面をスクロールしていくとそこには6月7日。すなわち今日の日付が書いてあった。


「なっ、、」


その時本部の隊長から連絡が入る。


『みんな、急いで帰ってきて!どうやら新宿駅でテロが起きたみたい!』


「クソ、間に合わなかったか。とにかく行くぞ」


俺たちすぐに8階から非常階段を使って降りていく。今日ここには、東京所属の治安部隊パブリックオーダー、そしてSATの全隊員が集結している。現在、新宿駅周辺では実質的に対抗できる部隊が存在していない。

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