第129話 憎しみが生むもの⑦
明らかに今までの階とは違って暗くなっているので俺たちはナイトビジョンを下して暗い中でも見えるようにしてから階段を上り始める。
もちろんこれまでと同じように弓削さんを先頭にして俺たちは階段を上がっていく。
階段を上がるとそこには大きなホワイトボードのようなものが置いてあるだけの殺風景な部屋が広がっていた。罠の危険を考えながら、慎重にホワイトボードまで進んでいく。
罠がついてなさそうなことを確認してから、ホワイトボードの内容を読んでみる。
そこにはかすれた文字で何かが書いてあるにがわかる。しかし、すでに一回消されてしまっているようで、何が書いてあったのかどうかまではわからない。じっと見たらなんとなくわかりそうな気もするが、そんな隙をさらすことはできない。ここは敵地のど真ん中なのだ。
とにかくまずはこの階の制圧を優先する。今のところ敵が出てきていないし、隠れられるような場所もないように感じるがどこから撃たれるかわからない。常に全方向を警戒しながらとりあえず7階の端まで進んでいく。
7階を端から端まで移動したが結局敵が攻撃してくるようなこともなく、何事もなく終わってしまった。部隊の中にホッとした雰囲気が流れる。
「階段はどこだ?」
「え?」
弓削さんが突然そういうので部屋の中を見渡してみる。この部屋にあるのは俺たちがここに来るときに上ってきた階段とホワイトボード、それだけだ。上りの階段なんて存在しない。
しかし、そんなことはありえないのだ。建設時の内部構造には確かに8階が存在しているし、外から見た時もしっかりと8階まであった。それにここの天井は時に高いわけでもなく、階層をぶち抜いて1つの階にしたなんてことはありえないだろう。
それなら階段を見落としているということになるが、そんなことはあり得るはずがない。暗闇だとはいっても俺たちはナイトビジョンを着けているので問題なく視界は確保されているし、そもそも階段なんていう目立つものを見落とすなんてことは起こりえない。
「…これもしかして、ここじゃないところからしか行けないやつじゃないですか?」
「ここじゃないところというと?」
「室内には他に階段はなかったはずですから、外階段とかですか?」
「確かに、外階段ならつながっていたような気がするよ」
ただこのビルはなぜか、外階段に室内から行く方法がない。外階段に行くためには一回建物から出て外階段を1階から登っていかなければならない。
「いったん、ビルの外に出るぞ。瀬霜にも連絡を取っておいてくれ」
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