第128話 憎しみが生むもの⑥
蒼葉君が放った弾丸はまっすぐにスナイパーの頭に進んでき、ちょうど眉間を貫くようにしてスナイパーの命を奪った。
これにて5階と6階の制圧が完了した。この階では多くの隊員が命を落としたこともあって非常に長く感じた階層だった。とりあえず、俺たちは全員で集まって制圧を続行するか話し合う。
「すでにSATの隊員の約半分がやられました。残りの階層にどのように敵が配置されているかによりますが、厳しい戦いになるのは間違いないと思います」
「確かに、損耗は激しいね。ただ弾薬関係に関しては心配はいらないと思うよ。うちのところでは十分に残っているし、2人のところもそれほど撃ってないと思うし」
「設計当時の内部構造でいうのならここから先は、特別制圧が難しい形にはなっていない。多少変わっている可能性があったとしても吹き抜けになっている可能性は少ないだろう」
「それに今のところ敵が普段使っているような部屋というわけじゃないような気がするから、ここから上には作戦室だったりそういうのがあるはずだよ。それなら敵を迎え撃つような形になっていないと思う」
「確かにそうですね。それなら続けるということにしますか?」
「そうだな。それにここを抑えることによる戦略的な価値は非常に高い。多少のリスクがあっても制圧するべきだ」
ということで俺たちはこれから先の階層も続けて制圧することが決定した。とはいってもすぐに制圧を再開するわけではない。SATの隊員の中には心身ともに疲弊している者が多い。それが、ちょっとした休憩でどうにかなるとは思わないが多少ましにはなってくれるだろう。
「弓削さん、なんかちょっとしょぼくないですか?」
「何がだ?」
「ここに配置されている敵の数ですよ。組織の規模にあってない人数じゃないですか?」
「あぁ、確かにそうだな。ただ敵の拠点はここだけじゃないのかもしれない。というかその可能性のほうが高い。となると一つ一つの拠点にはあまり多くの人員を割けないということじゃないか?全盛期に比べれば構成員の数も相当減っているだろうしな」
「なるほど。確かにそうですね」
「よし、そろそろ次の階に行くぞ!」
弓削さんの号令で、俺たちは少し緩んでいた空気をまた引き締めて次の階段へと向かう。その階段は今までの階段とは違い、赤いカーペットのようなものが引いてあり、まるでホテルのようだ。
階段の先ではまるで物の怪が住んでいるかのように真っ暗な空間がこちらを見つめていた。
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