第115話 不穏の足音㉖
「やっぱり厳しいですよね。となると今回も敵の行動待ちになってしまいそうですかね?」
「まだわからないな。おそらくだが鑑識の調査は続いているはずだ。もしかしたら重要な新情報が出てくるかもしれない」
「じゃ、情報が出るまではまた待機ですね」
「あぁ、ただ米軍と自衛隊は独自のデータベースで調査をしているはずだ。もしかしたらそっちで何か新しいことがわかるかもな」
弓削さんはそういいながらもパソコンで過去の事件を調べ続ける。俺もすでにヒントはないだろうことがわかりつつも一応過去の情報を見続ける。ここら辺の情報というのはあまり触れてこなかった部分でもあるので知らないこともあって意外と興味深い。
全解放戦線が起こした事件というのは日本だけじゃない。アメリカ、ドイツ、スペイン、イラン、中国と世界の様々な国でテロを起こしている。しかも狙いについて何か一貫性があるわけでもない。おそらく教義になっている人間を生から解放するということを目標に活動しているんだと思うが、本当のところはわかっていない。狙いが分散しているおかげで国連が関係した多国籍軍がやつらを叩けたので、それはよかったが逆に狙いが分散しているせいで警戒ができない。
ここまで日本で事件を起こしてきていきなり海外で今回の事件の続きを起こすなんてこともあるかもしれない。敵が読み切れないせいでやりづらい。
「そういえば、あのキューブの調査はどうなったんですか?」
「キューブの解析は今も続いているらしい。どうやら相当高い技術が使われているみたいで、解析が難航しているそうだ」
「そうですか。そういえば例の着物を着た女性、全解放戦線がらみでしたよ」
「正体がわかったのか?」
「はい、直接話してみました。自分から全解放戦線だと教えてはくれませんでしたけど元宣教師だと彼女自身のことを言ってましたよ」
「宣教師か、それなら生き残っててもおかしくないな」
「それに立川での攻撃のタイミングを知っているようでした。もしかしたら今は相当高い地位についているのかもしれません」
「なるほど。とりあえず、次に会ったときは確保してくれ」
「…やってみますけど、期待しないでくださいね」
「あぁ、最初っからダメもとだよ」
弓削さんはそういうと腕を上に伸ばして体をほぐしてから席を立ってコーヒーを2杯入れると俺の机に置く。
「そういえば、コーヒー大丈夫なのか聞いてなかったな」
「大丈夫です。ありがとうございます」
俺と弓削さんはすっかりまた汚くなった部屋を見ながらコーヒーを飲む。
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