第114話 不穏の足音㉕

しかし公式にはそう処理されているが、いまだに日本国内で全解放戦線によるテロを続いてるとネットなどではまことしやかにささやかれている。実際民間に対してテロの詳細を伝えるということは少し前に弓削さんが言っていたようにあまりないので、そうやってうわさが立つのは理解できる。しかし、ほとんどの事件では実行犯というのが捕まっており、それらが全解放戦線とは全くの無関係というのもわかっている。


ただ、そんな事件の中にはテロを起こした犯人というのが捕まらない、または判明しないということもある。そういったものは犯人が爆発に巻き込まれたことによって跡形もなく吹き飛んだといったように犯人がテロに巻き込まれたことによって死亡したと公式には処理されるが、本当にそうなのかは真相は誰にもわからない。


俺はこの時まだ小さな子供だったので都庁爆破テロのことはよく覚えていないが、ある事情によってそのあとに起きたことはよく知っている。しかし、今回重要になるのは都庁爆破テロよりも前のことだ。ただ、以外にもそれより以前の資料というのはあまり多くない。実際都庁爆破テロ以前のこの組織は危険な組織ではあったが突出しているわけではなかった。


そのせいではじめどこの組織が今回のテロを起こしたのかということは確定できなかった。当初は犯行声明が出るものだと考えられてたが結局犯人側から一切の接触は今に至るまでない。


さらに当時現場に展開していた敵部隊が想定よりも非常に強力な装備を使用していたため、SATにも大きな被害が生じさらに敵部隊の突破が遅れた。これによって証拠類が残っていたと思われるビルやその周辺に存在していた証拠類というのが崩れてきたビルの下敷きとなり回収することができなかった。今回の立川の件でもしビルの倒壊の前に証拠類が回収できていなかったら、あの時の完全な二の舞。そのぐらい今回の件は都庁爆破テロに類似していたのだ。


当時は証拠類が回収できなかったこともあり初動捜査が遅れてしまい、これは幹部の国外逃亡成功の要因の一つといわれている。


「弓削さん、都庁爆破テロ以前の資料ってないんですか?」


「あぁ、一応ないことは何だがその時の全解放戦線はあまり重要視されてなかったからな。当時の資料なんかはあまり作られていない」


ダメもとで弓削さんに資料がないか聞いてみたが結局資料はどこにもないらしい。かかわっている組織はわかったがこれでは、ただ不安が増しただけになってしまう。


「レゼルの資料のほうに何か面白いことはなかったんですか?」


「あぁ、そっちのほうも改めて一通り確認してみたがひっかかるようなところは一切なかった。今のところは収穫なしだ」


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