第113話 不穏の足音㉔

「それ以外のことだけど、あまりよくわからなかった」


「わからなかったんですか?あんなにたくさんの証拠類があったのに?」


「うん。どうやら今回の事件では最初からこちら側に証拠を渡さないように情報が入っているようなノートだったり電子機器を持たせてなかったみたい」


「なるほど。それじゃ、今回の事件は全解放戦線が関係しているというのを示すために行われた可能性があるということですね」


「うん。まぁ、全解放戦線が参加しているってわかっただけでも収穫はあったかな。最近は活動があんまり活発じゃないから話題には上がらなくなったけど数年前まではずっと追っていたからね。今でもその当時の資料が結構残っているはずだよ。とりあえず今回の事件につながるようなことがないか調べてみよう」


「アメリカ軍と自衛隊には連絡しますか?」


「それはもう上がやってくれているはずだよ。確証はないけど捜査に関しても軍が協力してくれるはずだからね」


「了解です」


「まずは以前の資料を漁ってみよう」


隊長の号令により俺たちはそれぞれの机に備え付けられているパソコンを使って以前の資料を読み始める。


俺も都庁爆破テロの調査報告書を開いて読んでみる。


それによるとどうやら爆発物は清掃業者に扮した全解放戦線のメンバーの2人が45階と20階で同時に爆破したようだ。使われた爆弾はプラスチッキ爆弾の一種だと推察されており爆発の威力によって20階は上から押しつぶされるようにして消滅した。


またこの時都庁内部には他にも爆弾を持った全解放戦線のメンバーが侵入していたが爆弾は不発。爆発の混乱に乗じて逃走している。のちに逃走した男は全解放戦線の拠点にて銃殺刑に処され死体となった状態で発見されている。


この時まだ治安部隊パブリックオーダーは成立していなかったためSATを含めた警察の特殊部隊が現場に急行し、周辺に展開していた敵構成員と交戦状態になった。この時敵構成員を速やかに始末できなかったことにより消防の救助が遅れ、死者が増えたともいわれている。


事件後、この事件の触発されたように爆発物による爆破テロが多発。この一連の爆破テロによって1000人以上が亡くなったとされている。これがのちに治安部隊パブリックオーダー成立する要因の一つとなる。


全解放戦線は事件後日本各地で同様の爆破テロを起こしさらなる犠牲者を出していった。のちにこの都庁爆破テロ以降の爆破テロは幹部を国外に逃がすための隠れ蓑としての役割があったことが全解放戦線構成員から判明している。結局12件の爆破テロを起こした全解放戦線はだんだんと日本国内での構成員の数を減らしていき最終的には中部地方にあった最後の拠点が陥落するとともに全滅した。


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