第111話 不穏の足音㉒
俺たちが司令部に戻るとそこではさっきと同じように職員があわただしく働いていた。しかし、だんだんとやることがなくなっていっているようで慌ただしさは時間とともに薄れていく。
真ん中で全体に指示を出していた隊長もそれは同じ。地図を見ながらも指示を出す頻度はだんだんと減ってきているように見える。
「みんな、お疲れ様。怪我はない?」
「はい、ビルの倒壊による被害は何もありませんでした」
「それならよかったよ。それで現場は今どんな感じなのかな?」
「周辺に燃えているビルの破片が散乱しているので立川駅周辺への立ち入りは当分無理でしょうけど、それ以外にはほとんど被害は出ていないようでした。数人の警官が怪我をしていましたが、それも命にかかわるものではないと思います」
「そう。それならよかった。証拠も回収をしなければならないのはほとんど全部回収することができたらしいよ。すでに鑑識が調査を開始しているらしいから明日にはもう結果が出るはず」
「了解です」
「多分明日もいろいろ仕事が増えると思うし、今日はもう拠点に戻ってから家に帰って体を休めていいよ」
「わかりました。隊長と菖蒲はどうしますか?」
「僕たちはまだ事務作業が残っているから、あとで乗ってきたのとは別の車を適当な警察官に運転してもらって帰ることにするよ」
「了解です」
俺たちはテントから出ると乗ってきて車が止めてあるところまで歩いていく。
「弓削さん、瀬霜さんは回収しなくていいんですか?」
「瀬霜ならどうせ俺たちの車の前にいる。わざわざ俺たちが迎えに行かなくたって大丈夫だろう」
俺たちが乗ってきた車のところに歩いていくと、その前に弓削さんが言った通り瀬霜さんが立っていた。
「ほらな、いった通りだろう?」
「弓削君、早く帰ろう。俺はもう疲れちゃったよ」
「…」
弓削さんは瀬霜さんのことを完全にスルーすると車のカギは開ける。とりあえず車のトランクに俺たちは持ってきていた銃を置いてから乗り込む。
中央線が立川駅のビル駅の爆破と倒壊によって使えないことによって利用しようとしていた乗客が車を使って移動しようとしたせいで道は渋滞していてなかなか進まない。
昔に比べて相当渋滞は減って快適になったらしいが、昔のことなんて知らない俺からすれば今でも十分道は混んでいるしストレスなく走ることなんてほとんどできないような気がする。
俺たちは通常時の3倍ほどの時間をかけて中野まで到着すると重火器系統を拠点において各々家に帰る。
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