第109話 不穏の足音⑳

俺たちは配置につくと順次警戒を始める。もしもう一度あの規模の攻撃があったら今の状況では相当厳しいことになる。そうならないことを祈りながらも敵が攻めてこないか見張る。


さっきの戦闘によって消防隊員はすでに全員退避してしまっている。すでに全体が炎に包まれているビルが崩れ落ちるのは時間の問題だろう。それのせいかビルの近くで作業している職員の多くは少し焦っているように見える。実際、もし作業が長引いてしまった場合ビルの倒壊に巻き込まれて、死亡する可能性が高くなる。


それにしてもなんで着物の女性はここにいたんだろう?話している感じではどうやら新興宗教のほうと関係がありそうではあるが本当かどうかはわからない。それにさっきの女性はホログラムに見えなかった。前回の例があるので何とも言えないことは確かだが、ホログラムかもしれないと思ってみていたのにも関わらずさっきの女性は本物にしか見えない。実際風が吹くたびに着物が靡いているのが確認できた。もしホログラムだというのならそんなことは起きないだろう。


ただだとするとさっきの女性は俺に拳銃を向けられておきながら余裕そうにふるまっていたということになる。普通に考えたら銃に慣れていないような人間が拳銃を向けられたらパニックになるだろう。周りにいた一般人がいい例だ。それなのに拳銃を向けても大丈夫だったということはさっきのがホログラムで銃を撃たれたとしても当たらないということなのか、それとも銃に慣れているのか。まぁ、もしくは死ぬことが怖くないとかいうクレイジーな人間かだ。宗教によっては死ぬことが怖いことだと感じていない可能性だってあるので何とも言えないが、それだと考えても何もわからないのでここでは銃に慣れているという体で考えたい。


もし銃に慣れているのだとしたらそれはそれで矛盾が生じることになる。さっきの女性の発言を信じるのなら女性は宣教師として数年前までは活動していたはずだ。普通の宗教ならば宣教師が銃に触れる機会なんてほとんどないだろう。そんな中でも銃を振れたことがあるということは相当危険な思想を持っているような宗教になる。しかも、数年前から宣教師としての活動もやめているということは数年前に何かしらの事件があった宗教団体と関係があるということではないだろうか?


拠点に戻ったら過去の情報を確認してみようと思ったその時、ビルが轟音を立てながら崩れていく。


近くで作業をしていた職員、そして周辺で警戒をしていた俺たちを含める警官は急いでビルから距離を取る。幸いにも作業が相当完了していたためほとんどの職員はビルから離れていた。

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