第108話 不穏の足音⑲

俺と弓削さんは攻撃を受けている個所を一つ一つ回りながらそれぞれを処理していく。すでに敵はほとんどの箇所で部隊が壊滅しており、もう攻撃を続行できる状態ではない。


「弓削さん、あとは蒼葉君のところだけですか?」


「あぁ、そうだな。残党処理は瀬霜が片づけてくれるらしいからな」


その時前から蒼葉君が血に染まった服を着ながらこちらに歩いてくる。


俺と弓削さんは血まみれになっている蒼葉君を見ると慌てて駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


「うん。これは全部返り血だから大丈夫だよ。それで残りの敵は?」


「もうほとんどの敵は殲滅しきりました。残党処理は瀬霜に任せていいらしいです」


「そう。それなら司令部に戻ろうか」


血まみれの服を着ている少年と銃を装備している大人二人が一緒に歩いているなんて、はたから見れば完全に拉致される現場にしか見えないんだろう。実際周りからは俺たちのことを怪しむような目線を感じる。


しかし、俺たちが着ている治安部隊パブリックオーダーの制服は警察の中で一目置かれる存在だ。さすがに俺たちに絡んできたりしてくるようなやつはいない。


司令部に行くとそこでは多くの職員があわただしく動きながら各所に連絡をしていた。その中心で地図を見ながら指示をしているのが隊長だ。


隊長はこっちを見ると顔から血の気が一気に引いていく。


「蒼葉!大丈夫!?」


「うん。これは全部返り血だからね。僕の血は一つもないよ」


「それならよかった」


隊長は蒼葉君が大丈夫だということを確かめるように深く抱きしめる。


「それで今の状況としてはどうなっているの?」


「今はもう戦闘がほとんど終わったから証拠となるようなものを集めることが主な任務となっているかな。急がないとビルが崩壊した時に証拠がビルの下敷きになっちゃうかもしれないからね」


「それなら僕たちもそれに参加したほうがいい?」


「いや、それは一般の警官たちにやってもらっているから3人は周辺の警戒をしてほしいかな。前回奴らが証拠を消したみたいに今回も証拠を消すために攻撃してくる可能性があるからね」


「わかったよ。それなら今度は駅前のところを3人で警戒しておくことにしておくよ」


「うん。頼んだよ。ただビルの倒壊には気を付けてね。本当にいつ倒れてきてもおかしくないから」


俺たちは駅前を警戒するために司令部から出てさっきまでいた駅前に向かう。駅前にはすでに多くの警官が死体の保護だったり敵の装備なんかを回収するために集まっていた。


さすがにさらに攻撃をされるなんてことはないと思うが一応警戒をしておくに越したことはない。

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