第105話 不穏の足音⑯
現場の部隊長らしき人物はこちらを見ると小走りでこちらに駆け寄ってくる。
「お疲れ様です」
「
「一応あたりを警戒させていますが何も見つかっていません。駅ビルの周辺には現在近づけないため中の状況だったり逃げ遅れはまだわかっていません」
「わかった。引き続き警戒を続けてくれ。俺たちも周囲の警戒をするが勝手に動いてもらって構わない」
「了解です」
部隊長らしき人物は俺たちに敬礼すると元居た場所に走って戻っていく。正直周辺の警戒は一般の警官たちだけで事足りる。ただ万が一敵構成員と出くわした場合のことを考えると俺たち3人がバラバラになって警戒に当たるほうがいいだろう。
「剣持は駅の反対側に向かってくれ。俺は線路に沿うような場所に向かう。蒼葉君はここを頼む」
「了解です」
「わかったよ」
俺は2人と別れると小走りで駅の反対側に向かう。
駅の反対側では俺がさっきまでいたところと同じように駅の周辺に規制線がはられており、その外には同じように多くのけが人が横たわっている。救急隊が来ているようだが、圧倒的に人手が足りていない。
といっても俺に医療の知識はないので手伝うことはできない。それに俺には別の役目がある。駅の反対側にも警戒している警察官はいるがさっきまでのほうよりも少ないように感じる。
規制線がはられている中には大量にがれきが落ちており、加え今にも崩れそうなビルがある。そんなところに敵がいることはほとんどないと思うので俺は立川駅から少し離れたところを警戒する。
こうやって大きな爆発を起こすことでそこに注目を集めて少し離れたところを爆破するっていうのはよくテロ組織がやる戦法だ。事件現場から少し離れているといっても駅ビルが燃えている様子というのはここからでも見ることができる。
ただ市民の中にパニックになっているような人がたくさんいるわけでもない。時折足を止めて心配そうに駅ビルを見る人はいても、ほとんどの人はそのまま普通の生活に戻っていく。
「意外とすぐに再会できましたね」
後ろからそう声をかけられる。
俺は素早く振り向くと同時に腰につけてあるホルスターから拳銃を抜き構える。
「そんなに警戒しないでください。別に危害を加えようなんて思っていませんよ」
着物を着た女性はそういいながら両手を上げる。
俺が突然拳銃を構えたのであたりにいた人々はパニックになりながら走って逃げていく。
「何をしに来た」
「別に用はありませんよ。近くにあなたが来たから声をかけただけです」
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