第103話 不穏の足音⑭

「なるほど。俺たちが東京に警備を集中させるようにすることで隙が多くなったほかの首都圏の県でテロを行うってことか」


「はい。それに期限が書いてないとなると、どこかで弛んだりする可能性もありますし」


「確かにそれはそうだね。一応神奈川県警と埼玉県警、千葉県警にも注意を呼び掛けておくよ」


隊長はそういうとポケットからスマホを出すとどこかに連絡をしながら部屋から出ていった。隊長が俺たちに伝えてくれた情報が本当に全部なのかはわからないが、それでも俺たちはできることをやるだけだ。


「それで弓削君、レゼルについて何かわからないのかい?過去の事件を遡って調べるって言ってただろう?」


「あぁ、調べたが結局新しい情報は一切なかった。それに前回俺たちがレゼルとやりあっていた時とはおそらくだが相当変わっている。内部の体制も一新されているし、幹部もほとんどを前回ので殺した。変わってないのはトップの奴だけだ」


「となると名前は同じだけどもはや違う敵と考えて戦ったほうがいいと?」


「そうだな。実際前回のままの体制だったといしたら今回の栃木の件ほど明確に警察を敵に回すような行為をしなかっただろう。前回よりもさらに凶暴になっていると考えて構わない」


「それに加えて正体不明の新興宗教まで関係しているってなると危険度は前回を大きく超えることになるよ」


「わかっている。だから何か情報が残っていないか探している全くひっかからない。正直に言えば次の事件が起こらなければこれは解決しないぞ」


弓削さんの言っていることは職務放棄ともとらえられるようなことだが間違っていない。今回の事件は不明な点が多すぎる。そもそも敵の規模すらわかっていないんじゃ、どうしようもない。


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それから1週間警戒を強めているにもかかわらずまったく何も行動を察知できない。静かすぎて気味が悪いぐらいだ。弓削さんも必死になってデータを探っているみたいだが結局まだ何もわかっていない。


俺もそれを手伝って過去のデータなんかを探っているが今回の事件に関係するようなことは一切見つからない。


その時隊長のスマホから着信音が流れ始める。


隊長はすぐに自分のポケットからスマホを出すと電話に出る。


「みんな、仕事だよ。場所は立川駅。そこまでは車で行こうか。弓削さん頼めるかな?」


「はい」


そういうと弓削さんは自分の荷物をまとめたバッグを持つと車を取りに走る。俺たちもそういわれた瞬間に任務に必要なものを準備する。俺は保管庫を開けて新品のSCAR‐Hを取り出すとバッグにしまった。

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