第100話 不穏の足音⑪
「これを見ればわかる通り、時代が進むにつれて重大事件は増えている。でも…」
「メディアに流れるような事件の件数は減っていると?」
「あぁ、そうだ。実際事件の件数だけで言うのなら年々減っている。まぁ、これの理由はわかるだろう?」
「管理が厳しくなるにつれて犯罪をしようと思っても見られているからといってやめる人が増えているからですか?」
「あぁ、そういった理由もないことはないと思うがここ最近で監視が強くなったわけじゃない。組織の数自体が減っていっているんだよ」
「やくざとかそういった類のものがってことですか?」
「あぁ、そうだ。今回俺たちが追っていたレゼルなんかのような巨大な犯罪組織に吸収されていっている。そういう組織に吸収されると意外に犯罪行為を働くことが少なくなるんだ」
「それはなぜです?」
「そういった組織では統率がきいているからだな。ある目標に向けて走っていくような組織ではその目的にそぐわないような行動をすることは許されない。だからそういうやつらがやっていた小さい犯罪ってのが減っているんだ」
「その代わり凶悪なテロなんかを行う組織なんかが巨大化していってテロが増加しているってことですか?」
「あぁ、そういうことだ。もしこの事件がすべて明るみになったら?」
「それを不安に思った市民なんかが反政府組織なんかにつながってどんどん治安が悪くなっていくと?」
「あぁ、その通りだ。そうなってしまっては悪循環が続いていってしまう。そうならないために少しでも情報が漏れる可能性を減らしているってわけだ」
「…だからって同じ警察官にまで情報が漏れないようにするなんて」
「今回の栃木県警を見てただろう?敵がどこにいるかなんてわかったもんじゃない。用心をしておくことに損はないんだ」
そういわれると何も言い返せない。実際安全だと思っていた仲間に裏切られたせいで栃木では大変な目にあったのだ。確かに情報を伝えるメンバーを絞ることで安全に捜査ができるっていうのはある。ただ安全を重視しすぎるあまり捜査が遅くなってしまっては意味がない。
「…弓削さんは誰も信用していないんですか?」
「そんなことはない。同じ
「一般の警官は信頼していないんですか?」
「信頼していないわけではないがな。いつ裏切れてもいいように背中は見せない。任務の都合上一般の警官に仕事を任せないといけない時だってあるが、そういうときでも大丈夫なようにしている」
「…同じ警察って仲間じゃないですか」
「わかっていないな。俺たちは一般の警察官じゃない。治安の最後の砦だ。俺たちには常に最悪を想定して動く必要がある」
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あとがき
人生で初めての100話到達です!本当にストックがなくてやばい!
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