第96話 不穏の足音⑦

ドアの前で息を整えてから俺はドアを開けて部屋の中に入る。俺が部屋の中に入るとそこではみんなが自分自身の装備を広げて点検していた。


「剣持さん、体は大丈夫?」


「はい、遅れてしまって本当にすいません…」


「それは気にしなくても大丈夫だよ。そもそも手術をしてから2日しかたってないのに出勤を求めているほうがおかしいからね」


「それで…今は何をしているんですか?」


「あぁ、栃木では相当激しい戦闘だったでしょ?そういう激しい戦闘があったときには終わった後に装備の点検をするのがうちらの慣習なんだよ。こうやって忙しかったりするとついつい点検を忘れちゃったりするし、激しい戦闘のあとは装備の破損も多いからね」


「なるほど。それじゃ、俺もやっておきます」


「うん。もし何か破損しているものがあったり足りないものがあったら報告してね。ここで一気に頼んじゃうから」


「了解です」


俺は自分の机まで向かうと武器の保管庫を開けて自分の装備を確認する。一つ一つ丁寧に確認していくが特に目立った破損は見当たらなかった。ただどれも汚れがすごいので一つ一つ清掃していく。


銃についている汚れというのは放置していると銃の動作不良などのアクシデントが生まれるようになる。いざというときにそうなってしまったら使い物にならない。だからこそあまり整備をしなくても動作不良の少ないAKなんかがテロリストに人気なわけだ。


今回の件では自分の装備の火力不足というのを実感した。そうそう重武装兵数人と戦うなんてことはないと思うが、今回の件はまだ終わっていない。となるとまだまだ重武装兵との戦闘をする機会というのもあるだろう。それなら現在俺がメインウエポンとして使っている5.56ミリのSCARでは少々これからに不安を感じる。となると同じSCARでも7.62ミリに対応しているSCAR‐Hが必要になる。


SCAR‐Hになると一回りほど大きくなるので室内戦だったり狭いところでの戦闘というのは少しやりずらくなるが火力は断然上がる。少し重くなるというのはデメリットではあるが重武装兵に対する戦闘を念頭に置くなら必要だろう。


それに別に任務によっては5.56を使うといった使い分けもできるわけだ。それなら備えるという意味でも持っておいていいだろう。


俺は使ってしまったグレネード系と新しいライフルがほしい旨を書類として印刷して隊長に提出する。


「剣持さんは、これでいいんだね」


「はい」


「わかった。それならこっちから連絡をかけておくよ。それにしても剣持さんはあんまり物欲がないんだね」


「別に物欲がないわけじゃないんですが、そこまで足りないことがあるわけじゃないので」


「瀬霜さんだったり、弓削さんにも見習ってほしいよ」

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