第95話 不穏の足音⑥

俺は中野から電車を乗り継いでまで行く。最寄り駅に降りてから駅のホーム上で少しあたりを見渡す。この景色を見るのも3日ぶりだ。だが逆に言えばまだあの戦闘が始まってから3日しか時間がたっていないということ。その前の海保のくだりを合わせたとしても5日程度しかたっていない。その間にいろいろなことがありすぎた。間違いなく人生で一番濃い数日間だろう。


俺は家のドアの前で手をかざしてドアを開けると中に入る。俺は寝室まで行くとそのままダイブする。本当はこのまま寝てしまいたいぐらいだが風呂にも入らないといけないし、服も着替えたい。


俺は風呂を沸かす元気もなかったのでさっとシャワーだけ浴びてパジャマに着替えると今度こそベッドにダイブしてそのまま睡眠に落ちる。


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翌朝、俺が少し痛む体を起こしてみるとすでに11時になっていた。うちから拠点までは準備の時間も含めればどんなに急いでも1時間はかかる。…確実にやらかした。やばい。しかも、当然連絡もできていない。これは本当にまずい。


俺はとにかく急いで制服に着替え、軽く見出しなみを整えてから家を飛び出す。駅までの道のりを走りながらポケットからスマホを取り出すと隊長に電話をかける。


『はい、もしもし?』


『すいません。今起きてしまいました。これから可及的速やかにそっちに向かいます』


『あぁ、それなら別に大丈夫だよ。今日は特にやることもないし、それに剣持さんは疲れているだろうから。それに無事でよかったよ。何も連絡がないから何かあったのかと思った』


『本当にすいません…』


『まぁ、別に急がなくてもいいから気を付けてきてね』


隊長はそういうと電話を切る。


隊長は急がなくてもいいと言ってくれたが社会人として時間を守るなんてことは初歩もいいところだ。そうでなければそれは瀬霜さんのような人間ということになってしまう。それだけは何としても避けたい。


と言いつつも結局電車に乗って拠点まではいかないといけないので俺が急ごうにもあまり変わらない。ただ俺は急ごうとする姿勢も大事だと思っている。できるだけ無駄のないように乗り換えをしていってやっとのことで中野についたのは12時過ぎ。


さすがに遅すぎる。俺は走っていつものカフェに向かうと、勢いよく中に入って本棚の前まで向かう。マスターがこちらを驚いた様子で見ていることなんてお構いなしに俺は「檸檬」を手に取って裏にある廊下を進んでいく。


そしていつもの部屋の前まで行くとドアを開けて中に入っていく。

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