第94話 不穏の足音⑤

「それと…あともう一つだけ報告があるんですが…」


「なんだ?」


「さっき中野に来る電車の中で…怪しい人間に声をかけられたんです」


「怪しい?不審者ってことか?それなら管轄は俺たちじゃないが…」


「そいつ、栃木でのことを知ってたんですよ。しかも俺が怪我をして手術をしたってことまで」


「なんだって!?」


「しかもそいつ、ホログラムだったんですよ」


「ホログラム?それなら見たらわかるんじゃないか?」


「それが隣に座って話していても気づかなかったんです。そいつが突然消えたのでわかったんですけど…」


「ホログラムを移すための投影機は回収してきたか?」


「はい。これです」


俺はポケットからさっき車内で拾った黒いキューブ上の投影機を出す。


「これは…市販のやつに見せかけた特注品だな」


「なぜわかるんです?」


「商品なら刻まれているはずのロゴが入っていない。それに多分だが市販のものよりも少し小さくなっている。これも鑑識に提出してもらおう」


弓削さんはそういうと電話をしている隊長のもとに向かう。電話が終わったらこれを報告するつもりなのだろう。


「剣持君、体はもう大丈夫なの?」


「はい、瀬霜さんは何か怪我とかなかったですか?」


「うん、俺はそこまで激しい交戦はしていないし、そもそも撃ちあったらだめだからね」


「なるほど」


「ただ今回のでミニミは壊れちゃったから新しいのを発注してもらわないといけないかな」


「あぁ、あれはもうバレルも曲がっちゃいましたし黒焦げですもんね」


「まぁ、隊長に言えばすぐに取り寄せてくれるから別にいいんだけどね。この期間に敵が何か行動しなければなんてことないよ」


「敵は何か行動を起こしてきますかね?」


「近いうちに絶対なにかやってくる。これは間違いないと思うよ。そもそもあんなどでかいことしたんだからもっとに何かでかいことをやろうとしてないなんておかしい。これから物語は始まっていくんだと思うよ」


「まずはあの手帳がどうなるかですね」


「そうだね。あれで何もわからなかったら本当に何か起こるまで待つしかなくなる。そうなったら絶対にいくらか犠牲が出ることになる。まぁ、そうなったときのために俺たちがいるんだけどそうならないことが一番だからね」


「そうですね。今回のことが大きな戦いの火ぶたを切らないことを祈ります」


「とにかく剣持君はもう休んだほうがいい。体が思ったよりも動くからといって無理するとよくないからね。体には絶対に手術もダメージが残っているはずだし」


「わかりました。それではお疲れ様です」


俺はそういうと部屋から出て家に帰り始める。

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