不穏の足音

第90話 不穏の足音①

俺が目を覚まして、そばにある時計を見るとすでに次の日の朝になっていた。軽く計算するだけで15時間近く寝ていたことになる。やはり3日間連続での戦闘は体にこたえる。


体を起こしてみると思ったよりも体が軽いように感じる。ほとんど任務の前の感覚と変わらない。となると少し体を慣らしてみるだけで大丈夫かもしれない。とにかく今日で入院は終わりになるのでまずは服を着替える。


上着を脱いだ時、少し傷跡を確認してみる。やっぱり脇腹の一部が不自然にえぐれるようになってしまっているがこのぐらいなら想定の範囲内だ。少し怖いので触ることはしないがおそらく触ったとしても支障はないはずだ。おそらくだが人口で作られた膜がまるで皮膚のように傷口を覆っていて、皮が再生してくるころには勝手に外れるようになっている。たとえるのならめちゃくちゃでかい絆創膏にかさぶたのような機能を加えたようなものだ。


治安部隊パブリックオーダーの隊服は真っ白なので少し血の跡が目立ってしまうがしょうがない。横の机に畳んであった俺の隊服を着て少し歩いてみていると、ドアが開いて看護師の人が入ってくる。


「体に何か違和感などはありませんか?」


「はい、大丈夫です」


「それではこれで治療プログラムは終了になります。お疲れさまでした」


看護師はそういって頭を下げると部屋から出ていく。相変わらずここの医療システムはドライだ。とりあえず治療の完了を伝えるために俺たちの拠点に向かわないといけない。すでに9時半になっているので俺があっちにつく頃にはさすがに全員が出勤しているだろう。


俺は医療センターから出ると総司令部の出口に向かう。治安部隊パブリックオーダーから外に出るときはここから品川駅まで送ってくれるバスがあるとのことなので、それに乗って品川に行ってそこから拠点に向かおうと思う。



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そのころ拠点では剣持を除いた全員が集まって緊急のミーティングをしていた。


「栃木県警から例の施設周辺での敵の痕跡についての情報が送られてきたよ」


「結局あそこにはヘリコプターは行っていないということでいいんですか?」


「まぁ落ち着いて。まず敵構成員についてだけど…そもそも敵構成員の死体が残っていなかったそうだよ」


隊長がそういうといったん全員が静かになる。


「どういうことですか?少なくとも俺たちが始末した敵構成員は確実に死んでいたはずですけど?」


「それが全部なくなっていたらしいよ。それどころじゃなくて例の敵の施設は内部での爆発によって完全に埋没。もう中に入ることは不可能になったらしい」


「…もしかしてやつらが夜の間攻めてこなかったのってそれをやってたからってこと?」


「かもしれないってことだね」

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