第88話 襲撃㊴

博多の女性に促されるまま俺は受付に行く。


「本日はどうされましたか?」


「脇腹に弾丸をもらってしまったのでそこの治療をしてもらおうと」


「了解いたしました。お呼びいたしますので少々お待ちください」


俺は受付を済ませるとさっきの博多の女性がいるところまで行く。そういえばまだ名前を聞いてなかった。


「お名前はなんでしたっけ?」


「そういえば言ってなかったわね。私は日野よ。それであんたどうして脇腹に弾丸なんて食らったのよ」


「栃木で作戦中に敵の機関銃で撃たれてしまってこの有様ですよ」


「…機関銃?何?テロでもあったの?」


「いえ、そういうわけじゃなくてある組織を追っていたんですけど栃木のそいつらの施設で戦闘になってしまいまして…」


「東京は大変ね…」


「日野さんはどうしたんですか?」


「私も作戦中に爆発に巻き込まれてビルから落ちたのよ。それで右足を複雑骨折」


「ビルから落ちたんですか!?」


「落ちたって言っても3階からよ。それに落下したのも車の上だったしね」


「お互い大変ですね…」


俺がしみじみとそういったときさっきの受付の人に呼ばれる。


「それじゃ、俺はいってきます」


「えぇ、お大事にね」


受付の人のところに行くと今度は看護師のような人が一緒に立っており、その人についていくように言われる。いわれた通りその看護師についていくと今度は診察室に通された。


そして普通なら医者が座っているところにいるのはロボット。それも人型というわけではなくて完全に機能だけを追求した、かわいげのないものだ。


「今日はどうしたんですか?」


ロボットはスピーカーから温かみのない自動音声で俺にそう話しかけてくる。


「任務中に脇腹に弾丸をもらってしまいまして」


「わかりました。それでは横にあるベッドに仰向けになってください」


ロボットの指示に従って俺はベッドに仰向けになる。すると天井から何らかの機械が下りてきて俺の体をスキャンしていく。科学が進んだ現代でも医療というのは人がやっていることが多い。もちろん診断なんかは機械に代わっていっているが患者と接触するようなとことでは今でも人間がその仕事をしている。ここのように機械が患者と話して診断までするといったことは珍しい。


「もう大丈夫です」


俺はベッドから起き上がるともともといた椅子に座る。


「傷の状態は非常に悪いと言わざるを得ない状態です。幸い弾丸の破片などは体に残っていないのでそこは大丈夫ですが、傷口の周辺が壊死してしまっています。この状況では傷口周辺を切除するかIPS細胞を使った再生治療しかありません。どちらにしますか?」


「…傷口周辺の切除でお願いします」


ロボットは淡々とやるべきことをこなしていくように会話を進めていく。やっぱり医療というのは人間の温かみが必要だと感じる。




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