第87話 襲撃㊳

「ということは剣持としては切除する方向で考えているということか?」


「はい、、実際脇腹が少しえぐれているだけで普通の行動に影響が出るわけじゃないですし…」


「僕たちは剣持さんの判断を尊重するよ。でも…もし治安部隊パブリックオーダーの仕事に支障があるからそうしようと考えているのなら考え直してもいいと思うよ。別に僕たちはここで働くために生まれたわけじゃないし、ここで人生を終えるわけじゃない」


「…」


隊長はそういうと俺たちのために警視庁が手配してくれた車に乗り込む。俺たちはそれに続いて車に乗り込んでいく。


=====================================


車の中ではみんなが倒れこむように寝ている。全員が徹夜で戦闘をしていたんだ。そりゃ、垂れ込むようにして寝るのもわかる。今回は瀬霜さんの運転じゃないから揺れも少ない。寝ていないのは俺と隊長と運転手の3人だけ。俺も寝たほうがいいというのがわかるんだがなぜか頭がさえてしまっている。

それにどうやら少しづつアドレナリンが切れてきたようで脇腹に痛みを感じるようになってきた。


隊長はチラッと運転席上部についているミラーの中にいる俺を見る。


「剣持さん、結論を急ぐ必要はないと思うけど…その目を見る限り決めたみたいだね」


「…はい、俺はここに入るためにずっと努力してきたんです。こんな怪我でここを去ることになるなんて我慢できません」


「剣持さんがそう思ったのならそうすればいいと思うよ。前模擬戦をしに行った総司令部に行けばそこで治療もしてくれるはずだよ」


「ありがとうございます」


もしかしたら早計だと思われるかもしれないが俺はこの判断を変えるつもりはない。俺にとって子供のころからのあこがれである治安部隊パブリックオーダーに入ることこそが生きる価値といっても過言ではない。隊長は俺の生い立ちだって知っているはずだ。だからこそ俺がこんなに早く決めても不思議そうじゃなかったのだろう。


俺たちはとりあえず俺たちの拠点があるところで銃だったり投擲物を保管庫にしまってから各自家に帰る。




俺は拠点の前で待ってもらっていたさっきの車に乗り込むと総司令部にまで向かってもらう。前回行ったときは長く感じたが今回は非常に短く感じる。


=====================================


総司令部につくと俺は壁に書かれている案内に従って医療センターに向かう。


医療センターに行くとそこには前回模擬戦をした博多の女性がいた。その人は右足をかばうように歩いている。


「お久しぶりです」


「…誰あんた?」


「東京所属の剣持です」


「あーー、あの模擬戦の時にいた一人ね。それであんたも怪我したの?」


「えぇ、脇腹に弾丸をもらっちゃいまして」


「そう、あんた達でも怪我を負うのね」


「そりゃ、人間ですから。そちらこそどうしたんですか?」


「少し高いところから落ちて右足を折ったのよ。そんなことよりあんた早く受付に事情を伝えてきなさいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る