第86話 襲撃㊲
「これは…もしかしたら細胞が壊死しているかもしれません」
「もし…壊死していいたら周辺を切除しないといけないんでしたっけ?」
「…そうなりますね。ただIPS細胞の技術を活用すれば回復させることもできるかもしれません」
「…ただそうなると相当の時間とお金がかかると」
「はい…そうなってしますね。どちらにせよここではそんな治療はできないので応急処置をするだけになってしまいます。これが終わったらすぐに病院に行ってください」
「わかりました」
俺は軽い応急処置をしてもらってから応急テントから出る。もしかしたら救急車で病院に運ばれるかもしれないと思ったがどうやら救急車は足りていないようだ。俺よりももっと重傷者の人が多いのだろう。ひっきりなしに救急車が駐屯地内に入ってきて患者を乗せてから外に運んでいく様子が見える。
俺は
「剣持さん、怪我の具合は大丈夫だったの?」
「…止血した時に強引にやっちゃったみたいで周りの細胞が壊死しているそうです」
「え?…それは…」
「…切除するのか?」
「いえ、まだ決めていません。IPS細胞を使えばどうにかなるらしいですけど、それだとやっぱり時間とお金が…」
「お金のことは気にしなくても大丈夫だよ。隊に所属している時の医療費は全部こっちが持つことになってる」
「そうなんですね。でも、やっぱりIPS細胞を使うとなると時間がかかってしまいます」
現代のIPS細胞の技術というのは数十年前と比べると飛躍的に向上している。実際に様々な場面で実用されることも多く、昔と比べればかなり身近な存在になったといえるだろう。ただそれでもやはりコストと時間の問題はある。昔と比べればどちらも圧倒的に使いやすいところまで落ちてきてはいるがそれでもまだ躊躇するような値ではある。
時間だけで言うのなら今回の部位だと元通りの状態になるまで3か月ほどかかることになる。もちろんその間は激しい運動などは控えてほしいといわれるし、そもそも痛みが酷すぎて普通に生活するのすら苦しいと聞く。さらに元通りになってからも拒否反応が出ていないかなどを定期的に病院で確認しなければならない。普通の仕事ならそれでもいいかもしれないが、もし俺が緊急の事件で配備されている時なんかにそれが出てしまったら使い物にならない。常に爆発するかもしれない爆弾を持っている隊員なんて使いにくくてしょうがないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます