第84話 襲撃㉟
弓削さんと話をしていると遠くのほうからだんだんとヘリコプターのローター音が聞こえてくる。ただ俺たちはそれを聞いても安心はできない。今回はすでに目視で確認もしているしそんなことはないとは思うが、実際昨日は味方のヘリコプターだと思ったやつにミサイルを撃たれて死傷者を出している。それに敵が攻めてくるのならこれがラストチャンスだ。おそらく敵はここで攻めてくると思われる。
俺たちは緊張した面持ちで周囲を警戒していく。俺たちがそうしている間にもヘリコプターの音はどんどんと近づいてくる。おそらく昨日、瀬霜さんが俺たちの座標を伝えていると思うのでそこに向けて飛んできているはずだ。
『こちら瀬霜、ヘリコプターを視認。機体には自衛隊の印が確認できる』
『了解』
これで飛んできているヘリコプターが味方だということが確認できた。あと俺たちが警戒するべきなのは敵の襲撃。しかし今のところ近くに俺たち以外の人がいるという雰囲気は全くしない。
すでにヘリコプターは俺たちのほぼ真上に来ている。もし攻めるのなら本当に今しかない。
『全員司令部に撤収して!もうヘリコプターが来るよ』
俺と弓削さんはそれを聞くと周囲を警戒しながらも司令部に急ぐ。俺たちが司令部につくとそこでは慌ただしく警官たちが動いていた。見ている限りだと荷物の整理なんかをしているみたいだ。実際ヘリコプターに無駄なものは持ち込めない。荷物はおろか仲間の遺体すら乗せることは厳しいだろう。
ふと頭上を見上げるとだんだんとヘリコプターが高度を下げているのが確認できる。ただ司令部の周辺に着陸することは周辺の木が邪魔になってできない。多分だが昨日ヘリコプターが弓削さんに向けてミサイルを撃ったところに着陸するはずだ。あそこならぎりぎりだがヘリコプターが止まるスペースがある。もうすぐにヘリコプターは着陸するはずだ。そしてできることなら着陸している時間をなるべき短くしたい。早く地面から離れることで襲撃を受ける確率を下げることができる。
司令部の機材もデータを完全に消去してからその場に放置することになるはずだから持っていくものは本当に少ない。
人員のうち今でも普通に動くことができているのは大体4割ぐらいといったところだ。残りは地面に横たわっていたり、警官同士で肩を貸しあいながら着陸予想ポイントに移動している。
このペースでいけばヘリコプターが着陸するころにはすでにほとんどの人員がヘリコプターのそばにいることができるだろう。
そして本当に周りで俺たち以外の人のいる感じがしない。もしかしたら敵はもう完全にここから撤退しているのかもしれない。もうそうならそれは楽でいいがその油断を狙っている可能性もある。最後の最後まで油断できない。
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