第83話 襲撃㉞

それから時間がたち空が白み始めてから2時間が立った。が、しかしいまだに敵からの襲撃は起きていない。


こっちも味方のヘリコプターが来ているのかなどの情報は通信妨害のせいで全くわからないが、おそらくそろそろ味方のヘリコプターが来てもいいような時間帯になる。すでに脱出までのカウントダウンが始まっているようなものなのだ。敵はもしかしたら本当に救援に来るヘリコプターのことを撃墜しようとしているのかもしれない。俺にはそれをやるメリットなんて思いつかないが敵を自分の理解できることだけで測ろうとするのも浅はかだろう。


『そろそろヘリコプターが来るみたいだよ。徐々に司令部のほうに防衛範囲を縮小させていってね』


『了解』


ヘリコプターがようやくきたみたいだ。通信機器もないのにヘリコプターが来ているというのがわかるということは双眼鏡を使って機体を視認したということなのだろう。ということならば本当に近くに来ているだろうし、こっちに来ているのが敵のヘリコプターということもないだろう。


まずは司令部に指示されたとおりにだんだんと司令部に近づいていく。やっと終わるという気持ちとともに、もし敵が攻めてくるのならこの時間帯がラストチャンスだという緊張している面もある。まず間違いなく敵はこちらに攻撃を仕掛けてくるはずだ。敵の武装からしてRPGとかそういった類のものを持っていてもおかしくない。とにかく近くに敵兵を入れないようにしなければならない。


俺が司令部に近づいて行っていると遠くに人影が見えた。方角的にはおそらく弓削さんだろう。弓削さんは俺のことを確認するとこちらに向かって歩いてきた。


もうこのぐらいの近さになると各々が離れて周囲を警戒する必要も低くなってくる。


「大丈夫だったか?」


「はい、何とか夜を越せましたよ」


「そっちも襲撃は来ていないのか?」


「あの警官たちが来てからは一回も来てないですね」


「そうか。瀬霜からも敵を排除したっていう連絡はない。おそらく敵は本当にこっちに近づいてきていないのだろう」


「もしかしたら俺たちが脱出する瞬間を狙っているのかもしれませんよ?」


「ありえなくはない。だが、そんな回りくどいことをするメリットも見つからないな」


「ですよね。だとしたら敵はもう撤退しているってことになりますけど…」


「施設周辺での戦闘を見ているかぎりまだまだ戦力はあったはずだ。撤退をしたとしてもそれは何かの目的があっての撤退ということだろう」


「そもそも今回の襲撃自体謎のことが多すぎます。一介のテロ組織が持っているには潤沢すぎる装備ですし」

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