第80話 襲撃㉛

そうやっていつでも襲撃が来てもいいように体制を整えているが襲撃はなかなか来ない。それどころか襲撃が起きるような気配すら感じない。もしかしなくても敵はすでに撤退しているのか?


ほかのところを守っている2人や一番遠くまで見渡せる瀬霜さんからも連絡がないということは本当にここ周辺に敵は来ていないということなのだろう。でも敵は俺たちがどこにいるのかということは確実にわかっているはずだ。


それにしても5月の山は寒い。もちろん雪なんかはとっくのとうに溶けているがそれでも相当寒く感じる。もしかしたら氷点下に近い温度まで下がっているのかもしれない。俺たちはまだ防弾ベストなんかも来ていて厚着だからまだ大丈夫だが制服一枚の警官たちは相当寒いだろう。


しかもどうやら霧がかかっているようだ。ナイトビジョンを着けているのにも関わらず少しかすんで見える。隠れている俺たちとしては有利な状況になったが明日の朝にもこの霧がかかり続けていたらヘリコプターでの救出だって困難を極めるだろう。


『こちら瀬霜、150メートルほど先で動きを確認。おそらく人数は少人数』


やっと敵が来たようだ。それにしても数人というのはおかしいような気もするがもしかしたら斥候的な役目なのかもしれない。となるとその後ろには相当の人数の部隊があるということだ。ここからが正念場になるかもしれない。敵の軽機関銃を鹵獲したとはいえ弾薬の数は少々心もとない。最悪の場合は敵を倒しながらまた武器を変えるしかないだろう。


そして草むらに隠れている俺にも何かが動いているのが確認できる。とりあえず軽機関銃を構えておく。いつでもトリガーを引けるようにしている中草むらから出てきたのは血まみれの数人の警官だった。


『こちら剣持、正体は怪我をした警官でした。今から保護します』


と報告すると俺は警官たちに近づいていく。しかし警戒は緩めない。あっちで戦っていたころは警官の制服を着た敵というのも存在していた。もしかしたらこいつらもそれかもしれない。


「大丈夫か?」


血まみれの警官の1人がこっちを見ると目を見開いてこっちに走ってきた。もしかしたら刃物で刺してくるかもしれないと身構える。


「俺たち以外にも生き残りがいたんだな!」


その声につられるようにほかの警官たちもこっちによって来る。どうやら反応を見るにこの警官は味方のようだ。


「何があったんだ?」


「お前だって知ってるだろう?よくわからん奴らに包囲されたんだよ」


「それは知っている。そのあとは?」


「そのあとは酷かったぞ。味方だと思っていた警官から撃たれて敵からも撃たれてこのざまだよ」


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