第65話 襲撃⑯

戦闘のことだけを考えるのなら山の中を進んだほうが敵から発見されるリスクだったり発見されたときでも逃げやすかったりといろいろと恩恵があるが、それはあくまで軍隊の訓練をされている俺たちに限っての話。そんな特別な訓練をされていない一般の警官たちは非戦闘員たちにとってはここまでの行軍ですらぎりぎりだっただろう。これ以上それは続けられない。それにこうして開けた場所なら航空隊が俺たちのことを発見することもできるかもしれない。


『隊長、道に当たったのでこれからそっちに沿って進んでいきます。今後ろについている連中はできるだけ始末してください』


『わかったよ。これ以上非戦闘員たちに山を歩かせるのは不可能だからね。ただ航空隊には気を付けてね』


『…了解です』


先ほどの山道ではなくコンクリートで舗装されている道を歩いているので明らかに歩きやすくなったしスピードも上がっている。非戦闘員たちの中にはすでにつらそうな表情をしながら歩いている者もいるが必死についてきている。やはりあれ以上山道を進まないのは正解だったのだろう。


そうして山道を下っていると遠くのほうからヘリコプターのローター音が聞こえてきた。やっと航空隊がこっちの異変をかぎつけてきてくれたのだ!県警に連絡がいけばERT《銃器対策部隊》だってなんだってこっちに投入してくれるだろう。


遠くから近づいてくる黒い物体に俺は手を振る。後ろにいる非戦闘員たちの中にもやっと助かったのだと安堵した表情で大きく手を振っているものが多い。そんな中で弓削さんだけが硬い表情でヘリコプターを見ている。


「弓削さんどうしたんですか?この逃走劇もあと少しで終わりになったんですよ?」


「…なんで黒に塗装されているんだ?」


「え?」


警察のヘリコプターというのは青色に塗装されたものが非常に多い。中には白だったり赤だったりするものもあるが黒色のヘリコプターというのはあまり聞かない。


「それにあのヘリコプター、ミサイル積んでないか?」


「…自衛隊の飛行機なのかもしれませんよ?」


「ここら辺に攻撃ヘリコプターが配備されているような場所なんてないはずだが…まずい」


『こちら弓削、あれは敵のヘリコプターだ!今すぐに全員近くの茂みに飛び込め!』


弓削さんは無線でそういうと近くにあったガードレールを飛び越えて茂みに落ちる。俺もそれに戸惑いながらもそれに続いて茂みに飛び込む。その時ヘリコプターから何かが発射されたような音がし、数秒後にはさっきまで俺たちがいた道路は粉々に吹き飛んでいた。


「剣持、走るぞ」




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