第61話 襲撃⑫

その場から逃げるように俺は伝達された集合場所に走っていく。山の中だろうと訓練された俺たちなら走ることもできる。走っている間にも何箇所かで戦闘をしている場所があったがそれを無視して俺は進んでいく。


伝達された場所に行くとそこにはすでに瀬霜さん、蒼葉君、そして司令部にいたであろう非戦闘員の警官たち、菖蒲さん、隊長がそろっていた。来ていないのは弓削さんだけだ。


「あれ?剣持が弓削よりも早く来るなんてどうしたの?配置されている場所を考えれば弓削のほうが早く来るはずなんだけどな」


「…急いできましたから」


「別に急がなくたってよかったのに。時間がないとはいえ1秒を争う状況じゃないしね」


その時さっき俺が走ってきた方向から弓削さんが歩いてきた。


「すまない。少し遅れた」


「大丈夫だよ。それじゃ、みんなに作戦を伝えようかな。これから僕たちがやるのは一転突破からの逃走だよ。調べたところだとおそらくこの北西方面が一番簡単に逃げ切ることができるはず。とにかくふもとまで行ってそこまでいけばあとは応援を呼ぶこともできるからね」


「ここで戦っている県警の警官はどうするんですか?」


「彼らには申し訳ないけどおとりをやってもらう。できるだけ接敵しないように山を下りるつもりだけどこの人数なら絶対見つかっちゃう。その時こっち側に敵の応援が来ないように引き付けてもらわなきゃならない。一応さっきすべての場所にリボルバーの弾丸を届けているから何もできないまま殺されていくなんてことはないようにしたよ」


「了解しました」


「それじゃ、始めよう。今はぎりぎりで陣形を維持しているけどいつ破られて敵が侵入してくるかわからないからね」


隊長の号令で俺たちはゆっくりと動き出した。非戦闘員であるオペレーターもいるのでこんな道なき道を急いで降りるなんてことはできない。幸い俺たち以外にも県警の警察官が護衛に入っているようだがそれでもかなり厳しいことになるだろう。


少し歩いていくとだんだんと近くから戦闘の音が聞こえるようになっていく。最初にして一番の関門である敵の包囲網の突破というミッションがすぐそこまで来ているのだろう。


歩いていくとだんだんと警官や敵方の死体も転がっているような場所になっていく。最前線が近づいてきているということだ。オペレーターの中では死体を見て口の手を当てて気持ち悪そうにしている者たちも出てくるが行軍は止まらない。


ただ死体が転がっていて戦闘の跡があるにもかかわらずまだ戦闘に巻き込まれていないということはここら辺はどうやら警官側が押し込んでいるようだ。まぁ、だからこそここが選ばれたんだろうが。

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