第60話 襲撃⑪

どちらも少し膠着したところで俺は敵がいると思わるところに向けてグレネードを投げ込む。グレネードの対処法としてはグレネード自体を何かで覆うか、投げ返すか、あとは不発弾であることを神に祈るかの3択だが今回は背の高い草が生えているところで投げているのでグレネードが投げ込まれたのはわかってもどこにそれがあるのかなんてわからないだろう。


俺がグレネードを投げるとその周辺から慌てたように3人の男が飛び出てきた。グレネードから逃げようとしてできるだけ遠くに逃げようとしている頭を撃ち抜いていく。


俺が頭を撃ち抜いてからすぐにグレネードが爆発してさっき俺が撃ち抜いた男の体の一部が空に舞う。この分なら死んだことを近づいて確認するまでもないだろう。


仲間の体の一部が吹き飛んだのに動揺したのか俺から見て斜め右の草が少し揺れる。警官といえどもちろん訓練されている。隙を見せたそいつはリボルバーで頭を撃ち抜かれた。


もう隠れても意味はないと思ったのか自棄になったのはわからないが残りの隠れているはずの3人が顔を出して俺たちのことを銃撃してくる。ただ相手は若干錯乱状態になっているのか草に隠れている俺のことをかすりもしない。俺はそいつらがリロードする隙に草の隙間から顔を出すと3人の頭に一発ずつ撃ち込んでいく。


「大丈夫か?」


「はい、なんとか」


さっきの自棄になったやつの銃撃では俺以外の警官にも当たってはいなかったみたいだ。とにかくこれでとりあえず3つのうち2か所を制圧した。この分なら割とすぐにこちら側の制圧はできるだろう。ただ俺たちが応援行っていない方角は銃弾もないだろうし相当危ない状況になっているだろう。誰も明言はしていないが俺たちが応援にいってない方角というのはさほど重要ではないということだ。簡単に言えば見捨てられているといったもいいかもしれない。非戦闘員たちを逃すために壁となってもらっているわけだ。残酷だが戦場では命が平等に扱われるなんて言う妄言を言っているやつから死んでいく。戦場では明らかに命の重さに差があるのだ。


その時司令部から通信が入る。


『こちら、司令部。治安部隊パブリックオーダー全員に次ぐ、全員北西方向に集まれ』


どうやらこれからここからの脱出作戦が始まるみたいだ。ただこれが通告されているのは治安部隊パブリックオーダーを含めた限りなく少ないメンバーにしか伝えられていないのだろう。それは今俺の目の前にいる警官たちも同じだ。俺たちは彼らという犠牲の上でここから脱出できるということを忘れてはならない。


「すまない。連絡が入った。ここは任せても大丈夫か」


「はい、ここはもう任せてください」


そういって敬礼してくる警官の顔を俺は直視することができなかった。


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