第56話 襲撃⑦

司令部に向かうとそこでは何人もの警官が忙しそうに動いていた。ただその警官たちは武装をしているというわけではない。おそらくだが姿を見るにオペレーターなどの非戦闘員たちなのだろう。つまりまだここで戦いが始まっているわけではないということだ。


本部らしきテントに入るとそこにはいくつもの画面の前で忙しそうにパソコンをいじりながら各部隊からの情報を整理している菖蒲さんと地図を広げてその前で難しい顔をしている隊長がいた。


「間に合ったみたいだね」


「うん、それで今はどんな状況なの?」


「どこも押され気味だよ。それどころかいまだにどれだけ仲間が生きているのかということすら把握できないところすらある」


「外からの援護は期待できないの?」


「どうやらここ周辺に強力な妨害電波がはってあるみたいで外に連絡ができないんだよ。航空隊のヘリコプターもどこかに行っちゃった」


「…もしかして警察に裏切者がいるってこと?」


「まだ断言はできないけどね…」


「でも今はとりあえずこれをどうにかしないといけない。僕たちはどこに行けばいいの?」


「司令部に1人、一番押されている南側に2人…かな」


「もう一人は?」


「もう一人には突破口を作る手伝いをしてもらおうかなと思ってる。…正直に言えば治安部隊パブリックオーダーがいたとしても人手が足りないぐらいないんだ。どこに行ってもひどい状況。でもその中でも司令部のところでいるのが一番しんどいと思う」


「わかった。それなら僕がここに残るよ。弓削さんと剣持さんは南側に、瀬霜さんは突破口のところを頼んだよ」


「「「了解」」」


行く場所も決まったので俺と弓削さんは走って南側に向かう。多分だけど普通の警官たちのほとんどがすでにリボルバーの弾がない状況で戦っている可能性が高い。となると戦力になるのは俺たちとあとは機捜隊のメンバーだけだ。だけど機捜隊の隊長である赤嶺さんは生死不明。本当にまずい。


「剣持、多分だが俺とお前は少し離れた場所で戦うことになる。迷うなよ」


「わかってます。大丈夫ですよ。自分はもういくつか実戦もやってますから」


「…くれぐれも死ぬなよ。治安部隊パブリックオーダーはずっと人手不足なんだ。新人に死なれちゃ困る」


「こんなところで死にませんよ。まだあいつのことを捕まえられてないですし」


その時前方に木の陰に隠れている警官たちが見えてきた。どうやらその警官たちはすでに弾が切れているらしくテーザーガンに持ち替えて戦っているようだ。ただ森のような障害物が多い状況でテーザーガンはほとんど使い物にならないだろう。実際警官たちが隠れてるところの少し先には数人の警官が血を流して倒れているのが見える。


「大丈夫か!」


弓削さんがそう声をかけると警官たちは少し肩をびくっとさせて恐る恐るこちらを見てきた。


「あっ、、あなたたちは味方なんですか?」


その警官はテーザーガンをこちらに向けながらそう話しかけてきた。

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