第48話 凶報⑲

でも長考はできない。俺がそうやって考えている間にも敵の足音は迫ってくる。まだ姿は見えないがだいぶ近くに来ているということは間違いないだろう。…まだ姿は見えていない?もし相手もそうだとしたら…


俺は一つの考えを考えつくとすぐに少年にその計画を話す。


「意外と、ギャンブラーなんだね。いいよ、面白い。それで行こう」


少年の了承が得られた瞬間少年が接敵しているほうに残り一つのフラッシュバンを投げる。その瞬間空間全体に閃光が広がり直視をしてしまった相手は少しの間視力を完全に失う。


そのすきに俺は遮蔽物となっていた壁を乗り越えて俺たちに迫ってきている敵の後ろにつながる通路に出る。俺がそうやっている間に少年がさっきフラッシュバンを食らった敵を掃討する。ここからはスピード勝負だ。俺が敵の後ろ側につくのが先か少年のところに敵がたどり着くのが先か。


俺が敵の背中をとらえたとき銃撃の音が鳴り響く。そして一番先頭にいた海保の職員が倒れていく。敵が一瞬そっちに気を取られた瞬間に俺は肩にかけていたライフルをもって海保職員に対して乱射する。ただ少年に流れ弾を当てるわけにもいかないので少年との射線上に被った敵は少年に任せる。


まともに俺の銃撃を食らった海保の職員たちが倒れていく。そして俺が仕留めきれなかった分も少年がきれいに頭を撃ち抜いて終わらせる。


「きれいに作戦が成功したみたいだね」


「そうだな。…ただ一歩間違えていれば倒れていたのは俺たちだったかもしれないと考えればゾクッとする」


「そうだね。もし少しでもタイミングがずれていたら僕がやられていただろうしシビアな戦いだったことに間違いはないよ」


「ただ、おそらくこれで相手側の戦力のほとんどを削ったはずだ。もう敵にはろくに戦えるような人材がいないと思う」


「それは間違いないね。でも油断は禁物だよ。少数ならまだ残っている可能性だってあるしその少数がとんでもない精鋭の可能性だってあるんだから」


「そうだな。艦橋の外にある階段から脱出されてそのまま緊急用のボートで船から脱出されたら面倒なことになる。とにかく先に急ごう」


「そうだね。…でもそれも先にやらないといけないことがある」


少年はそういうと俺に対してライフルの銃口を向けてきた。少年の目には感情がこもっていない。


「何のつもりだ?」


「勘違いしないでほしいな。別にこれは私怨とかそういうわけじゃないんだ。ただ助けたいだけなんだよ」


そういうと少年は引き金を引く。


銃口から出た銃弾は俺の横をかすめてそのまま手を伸ばして銃を取ろうとしていた海保の職員の頭に当たった。


「…遊んだな」


「なんか空気が重くなってたからね。銃を取ろうとしていた敵を掃討するのと同時それを直そうとしただけだよ」

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