第49話 凶報⑳
少年の悪質なドッキリなんかもあったがそのあと特に重大な問題は起きずにそのまま艦橋を登っていきながら各階をクリアしていく。
海保の職員にももう会わなくなった。たぶんさっきの広場にいた部隊が本当に最後の砦といった役割だったのだろう。そして最後に残ったのは艦橋部分の一番上。海が見渡せるような指令室だ。俺は専門外なので分からないがもし海上での戦闘になったらここから指揮をするのだろう。
扉を開いて中を確認するが中には誰もいない。そして開いたままになっている非常階段につながる扉。一歩間に合わなかったようだ。とはいえまだこの船から脱出したと決まったわけではない。もしかしたらまだこの船にいるかもしれないので開いている扉の外にある階段を使って下に降りていく。
階段を下っているといきなり船の中にアラームが響き渡る。俺と少年は一度止まって周囲を確認する。それが鳴りやむと甲板が開き中からヘリコプターが出てくる。ヘリコプターの中を見ると多分この船の艦長だろうと思われる海保職員、そして俺が追ってきた組織の幹部が乗っていた。組織の幹部は俺と目が合うとニヤリと笑い操縦士に合図を送る。その合図に合わせてヘリコプターが発艦する。俺たちはそれをしたから見ているしかなかった。
『こちら剣持、組織の幹部と艦長は艦載されていたヘリコプターを使って脱出しました』
『こちら本部、了解。そちらに今から海自の艦艇が行く。それに隊長も乗っているはずだ』
どうやらここに警察と自衛隊の迎が来てくれるらしい。そして多分ここからが大変になるのだろう。結局取り逃がしてしまった組織の幹部も探さないといけないし海保関連のこともやらないといけないだろう。
「…お兄ちゃんも来るのかな?」
「お兄ちゃん?」
「あぁ、そういえば言ってなかったね。僕は
「え、、、えーーー!」
俺が衝撃の事実を呑み込めずにいると海自の艦艇が石見の隣に横づけして岩見に海自の隊員そして隊長と弓削さんが入ってきた。
「お疲れ様。初めての実戦だったのにまさかこんなことになるなんてね」
「生きているだけ上出来だ。よくやった」
「ははは、ありがとうございます」
確かに今回のことを良く思い返してみると本当にいつ死んでもおかしくないような死線にずっといたような気がする。自分でも本当によく乗り越えることができたなと思う。
「それでいつ日本に帰ってきてたの?」
「うーーんと、確か10日ぐらい前かな。CIAから帰ってきてそのまま海保に潜入してた」
「それで少しは連絡してほしかったな。普通にいつも音信不通になるから心配だよ」
「ごめんね。次からは気を付ける」
なんかこう小さい少年が会話しているのを見るとほっこりする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます