第35話 凶報⑦

トラップがないことを確認してから俺は梯子を使って秘密の地下室へと続いているだろう通路へと降りる。


そこは見かけよりも余裕のある作りになっていてかがまないで普通に立つことさえできる。ただ遮蔽物のようなものはないのでもしここで戦闘になったら被弾を避けることはとても難しい。ボディーアーマーを着ていると言えど銃弾の衝撃は伝わってくるし威力の強い球だったり至近距離で銃撃を受けたら貫通することだってある。


交戦にならないことを祈ることしかできない。


そんなことを考えている間に弓削さんは梯子を下りきっていたみたいだ。


「ここでの交戦はなるべく避けたい。隠密に素早く突破するぞ」


「了解」


小声で弓削さんと会話をした後、少し通路を進んでいるとすぐに扉が見えてきた。どうやら通路自体の長さはあまり長くないみたいだ。


防弾ベストのポケットからスネークカメラを取り出して扉の隙間から室内を確認してみると何人かの男がタバコを吸いながらカジノ台を囲んでいるのが確認できる。確認した限りだと護衛のようなものは確認できないがディーラーの格好をしている男が少し気になる。


もちろんディーラーなのでたばこは吸っていないのだがその男は少し周りを警戒しているような目つきをしているようにも思える。


ただ突入に障害となりそうな点は見つからないのでそのまま弓削さんに合図を出して突入する。


「警察だ!手を挙げろ!」


突然の侵入者に中にいた数人の男たちは驚いたような顔をしながらも腰に手を伸ばした。


【パンッ】


その時乾いた発砲音とともに腰に手を伸ばしていた1人の男の頭に大きな風穴があいて倒れ込む。


「これは警告だ!全員おとなしくしろ」


目の前で仲間の頭に穴がい空いたことで男たちは腰を抜かしてしまったようだ。全員が手を挙げて抵抗の意思がないことを示す。


ただ俺たちはこいつら全員を拘束できるような手錠を持っているわけではないので俺がこいつらを監視して、その間に弓削さんがどこかに隠れるような場所が残っていないのかを探すことになった。


カジノ台とか絨毯とかこの部屋にはいろいろなものがおいてあるのでさらなる秘密の通路がある可能性も捨てきれない。


そういえば例のディーラーは結局何もなか…


「弓削さん、さっきまでいたディーラーのやつがいなくなっています!」


「…それは本当か?」


「はい、さっきこの部屋の中を確認した時にこいつには警戒が必要だと思ったので間違いないです」


「そんな奴のことをどうして見逃したんだ!」


「そっ…それは」


「まぁ、今はいい。それよりそいつから目を離したのはいつだ?」


「こいつらが膝をついた時に一瞬だけ目を離しました」


「その時はどこにいた?」


「あのカジノ台の裏です」


俺の言葉をもとに弓削さんがカジノ台の裏を探る。


「あったぞ、隠し通路だ」

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