第34話 凶報⑥

とはいえ決めつけるのは良くない。もしかしたら俺たちがここに入る前に来ていることを察知してトラップを仕掛けたのかもしれない。


とりあえずトラップの解除は弓削さんがやってくれるのでその間俺は周りから襲撃されないように警戒をしておく。


「もう大丈夫だ。進むぞ」


「了解です」


そのまま2階、3階とクリアリングをしていくが何もない。


誰かがここに最近いたような痕跡すらもないのだ。


『こちら弓削、工場内には対象者はいない模様』


『こちら本部、下水道などに反応はなし。そちらから脱出しているような行動も確認できない』


『了解した』


「ここから脱出しているわけではないようだ」


「でも、ここには誰もいないようですよ。なんなら人のいた痕跡すら残っていません」


「確かにここ最近人が入り込んでいるようには見えないな。さっきのトラップも少し前に取り付けられていたような感じだったしな」


「だとするとここは拠点じゃないということになりませんか?」


「いや、トラップを仕掛けているということは少なくともここが襲撃される可能性を考えていたということなんだろう。それにここには実際、組織の人物の出入りも確認されている」


「…それならどういうことなんでしょう?」


「もしかしたら隠し部屋があるのかもしれないな」


「隠し部屋?そんなものがどこに?」


「2階に上がるための会談にトラップが仕掛けられていたということは2階以上の階層には足を踏み入れるようなことはあんまりなかったということなんだろう。いったん下に戻るぞ」


「了解です」


『こちら弓削、隠し部屋の可能性を考えもう一度1階を捜索します』


『こちら本部、了解』


隠し部屋の可能性を考えてもう一度1階の捜索を行う。さっきはクリアリングをしたというだけで細かいところまでじっくりと確認しているわけではない。部屋の隅々まで細かく見ていく。


「こっちに来てくれ」


1階に降りてから手分けして部屋の隅々をしていると弓削さんから呼ばれる。


「はい」


「ここを見てくれ。ここまでは埃があまりたまっていないがここから先には埃がたまっているのがわかる」


「ということはここら辺に隠し部屋へと続く何かがあるということですか?」


「その可能性が高い。ここらを重点的に探すんだ」


埃の境目を重点的に探していると床にうっすらとだが切れ目が入っているのが見つかった。


「弓削さん、ここ見てください」


「おそらくここだな。銃を構えておけ。俺が開ける」


「了解です」


『こちら弓削、隠し部屋と思われる箇所を発見。今から突入する』


『こちら本部、了解した』


本部への報告の後弓削さんが床にある扉をゆっくりと開く。


俺がその中をのぞくとその中には梯子がありその先は少し明るくなっていた。幸いにも梯子にはトラップは仕掛けられていないようだし、俺たちに気づいて慌てているような物音も聞こえない。もしこの先に敵がいるのならチャンスだ。

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