反逆
第28話 怪しい兆候
射撃訓練場から帰ってから数日間は特に何事もなく書類作業をするだけだった。ちなみに
まぁ、瀬霜さんとか菖蒲さんはやっていないみたいだけどね。実際この情報整理からめぼしい情報を見つけることなんてほとんどないらしい。瀬霜さんとか菖蒲さんの気持ちもわからなくもない。そんなほとんどやる意味がないようなことに対してモチベーションなんてわかない。
とはいえ、一応業務内容だからやらないといけない。だから俺もやっている。
「ここなんか変じゃないか?」
少し考え事をしていて手が止まっていた俺に弓削さんが話しかけてくる。
「どっ、、、どうしたんですか?」
「この報告書を見てくれ」
どうやら俺のことを怒っているわけではないようだ。一安心。弓削さんがそう言って見せてきたのはある路地裏で男性が変死したというもの。確かに変死っていうと少し怪しい感じがするかもしれないけど変死者なんて年間で何千人もいる。しかも死亡原因もわかっているみたいだしなんら怪しいところをないような気がするけど。
「何かおかしいところあります?」
「ここだ。死亡原因はペントバルビタールと書いてある」
「ここの何がおかしいんですか?ペントバルビタールというと致死率が高い薬ですしあんまり気にすることでもないと思うんですけど」
「これをどこから手に入れたんだ?」
「え?確か普通に売っているんじゃありませんでした?」
「いや、もう販売されなくなっている。一般人には入手困難だ」
このペントバルビタールという薬は実際に日本でも麻酔用として販売されていたが致死性の高さから販売が終了され2050年にはもう使われなくなっている薬である。
「そうなんですか…確かにそうなると一般人の彼がどうやって入手したのか気になりますね」
「そして彼はどうしてこんなところで死んだだろうか?普通服毒自殺するときは家とかでやるものだろう。なぜ会社帰りでしかもこんな汚い路地裏でやったんだろうか?」
「確かにそうですね。…一応報告しておきますか?」
「そうだな。これは一度あっちに投げてみよう。おそらく何か見つけてくれるはずだ」
俺たちが見つけた違和感に関する調査っていうのはさすがに他の部署がやってくれている。すでにとんでもないオーバーワークなのにこれ以上を求めるのはさすがに酷だから妥当だろう。
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そして1週間後全く同じ状況の変死体が見つかった。
「今回の変死体も前回の変死体のものと全く同じ状況で見つかりました」
「今回もペントバルビタールだったのか?」
「はい、検死官によるとペントバルビタールの過剰摂取による呼吸停止が死亡理由だそうです」
「そうなると、前回の事件と今回の事件はつながっているということか。…捜査ではまだ何も見つかっていないんだよな?」
「はい、何か決定的なものは見つかっていないということです。ただ被害男性の体にはタトゥーがあったそうです」
「タトゥー?」
「はい、右手の甲に小さく翼の模様が彫られていたそうです」
俺はそういって弓削さんに被害男性の右手の甲を撮った写真を見せる。
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