第27話 模擬戦⑫

待つこと数分エスカレーターのほうからグレネードが爆発する音が聞こえてくる。ついにこの階まで上がってきたみたいだ。そして敵はまず私がいる方ではない方をクリアしているようだ。音を聞いている限り確かにクリアリングの手際はいい。だが私だってそのぐらいはできる。ここで敵を蹂躙して私こそが東京に配属されるべき人間だと証明して見せる。


そしてついに私の出番が来た。敵が私が陣地をしいている通路に顔を出す。


その瞬間私は機関銃を顔にめがけて乱射する。だがこの銃撃は間一髪のところでかわされた。


まさかこの距離での機関銃の銃撃に反応するやつがいるとは驚いた。こいつは確かに面倒ではある。が機関銃がある限りこちらには近づくことはできない。グレネードが来たところで遮蔽物に隠れればいいだけ。簡単すぎる!


そして敵は案の定グレネードを投擲してくる。思ったよりも正確に私のいるところに投げてくるので少し焦ったが遮蔽物に隠れてやり過ごす。機関銃があるところに戻るって機関銃を乱射しようとした時またグレネードが飛んでくる。たださっきのグレネードの形と少し違う。


まさか、これはフラッシュバン!?クッソ、フラッシュバンのことを考えるのを忘れていた。すぐに顔をそらして目を守ろうとしたが、どうやら一瞬だけさっきよりも反応が遅れたらしい。


目の前でフラッシュバンが起動して視界を奪われる。くっ、まったく見えない。ただまだ勝負は決まっていない。この狭い通路なら今から機関銃を乱射してももしかしたら敵を倒せるかもしれない。そんな一縷の望みにかける。敵の姿どころかちゃんとまっすぐ撃てているのかもわからな状態でトリガーを引き続ける。


ただそれはかなわなかったみたいだ。まずは足に経験したこともないような痛みを感じでそのまま倒れ込んでしまう。この空間では痛覚も実際に再現されているので死ぬほど当たったときに一瞬痛みを感じただけで今でも痛いはずなのに自分はいたって冷静だ。これが負ける感覚なのか。


少しの感傷に浸り私の意識は途切れた。


そして目覚めたときには現実世界に戻っていた。あぁ私は負けたんだな。あんなに啖呵を切っていたのに。


「日野君、どうだったかな」


「…東京との実力の差を見せつけられました。ただそれだけです」


「そうか。まぁ、反省もあると思う。それは一人で考えなさい。失敗から人は成長していくものですから」


そういうと隊長は去っていった。


今回の戦い自分として本当に考えさせられるような戦いだった。一番最後の布陣。東京を追跡するときのやり方。そして一番最初に立ててあった作戦。すべてが裏目に出ていた。私には指揮官の才能はないみたいだ。ただ隊長も言っていたようにここから学んでいけばいい。


私が東京に行くことはできないかもしれないけど少しでも追いついて一緒に作戦をするときに足を引っ張らないようにしないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る