第24話 模擬戦⑨

試合終了の文字が浮かび上がってからすぐにだんだんと自分の体の感覚が戻ってくる。こうやって自分の体に戻ってもさっき正直あんまり変わらないなんて本当にすごい。こうやって体に感覚が戻ってきたのがわかるのも視界が暗転しているからだしこれがなかったらずっとこの機械の中で過ごしていても気づかないような気がする。


さっきまでの仮想空間がめちゃくちゃリアルだから忘れそうだったけど今俺は治安部隊パブリックオーダーの施設で訓練をしているんだよな。


「お疲れ様。心配はしていなかったけどさすがの実力だね」


「ありがとうございます。これでも警察官学校時代にいろんなことをたたき込まれているので」


九条君から見ても今回の戦いは結構よかったみたい。とはいっても中学生である九条君が本当に今回の戦いを理解しているのかどうかはわからないけど。


「剣持、良くやった」


「ありがとうございます、弓削さん」


「ろくな作戦会議もしない中で被害を1人にとどめて相手を制圧できたっていうのは誇っていい。まぁ瀬霜がやらかさなければ完封することもできそうだったがな」


「それは言わない約束でしょ?誰だってミスはあるんだから」


「そうはいっても自分から喧嘩を吹っ掛けたのに開始早々に脱落するのはありえないだろう?」


「それは悪かったって思ってるよ。でもあれは必要な犠牲だったってことだよ。俺がやられなかったら機関銃で3人とも蜂の巣にされてたかもしれないし」


「必要な犠牲があるような作戦はいい作戦とは言えないな。まぁ今回は相手の練度も高かったからしょうがないか」


「そうだよ。だって2人をおとりに出すなんて普通に考えたらありえないでしょう!」


「ただあれは軽率な行動だったな」


「わかってるって」


そういうと瀬霜さんは拗ねたような感じで黙ってしまった。


「皆さんお疲れ様です。ナイスバトルでした」


そういいながら博多のメンツが集まっているところから1人の男性がこっちに向かってきた。


「お疲れ様です。成田さん」


九条君はそういいながら敬礼をする。SATの隊長にも敬礼をしていなかったのにこの人には敬礼をするってことはこの人は相当偉い人なのかな?


「いえいえ、私は何もやっていませんよ。それよりうちの日野がすいません」


「いえ、こちらの瀬霜が吹っ掛けたと聞いているのでこちらの不手際です。本当にすいません」


「まぁ…今回はお互いさまということにしましょう。それにしてもそちらの新人はいいですね。ちゃんと戦えてますよ。うちの新人なんて初めの狙撃の一撃で吹き飛んでしまったのに」


「そうですね。確かに例年の新人と比べてみると実践慣れしているのかなという感じがします。とはいってもそちらの新人だって基礎はできてましたよ。ちゃんと盾の構え方だって出来てましたし」


「それでもさすがに不用心だったと言わざるを得ないですよ。確かに対物ライフルを食らうことは想定していなかったとしてもあそこではどうにかして生き残ってほしかった。あそこで一人もやられてなかったらまた違う試合展開になっていましたから」

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