第10話 初実戦②

事件があった世田谷区役所前にはマスコミや野次馬が集まっていて混乱していた。


「とりあえずSATと合流しよう。作戦とかを詰めないといけないし」


ということでSATの司令部があるテントまで向かう。


テントの中には難しい顔をした司令官のような男性とその護衛の女性がいた。


「滝口司令官、お久しぶりです」


「九条君か、久しいな」


九条君は司令官の前で敬礼をすることもなく普通に会話を始めた。普通に考えたら上の立場の人には敬礼をするがどういうことなんだろう。


「それで現在の状況はどんな感じですか?」


「現在、犯人は世田谷区役所第2庁舎の一階のカウンター裏に人質を拘束している。ただ犯人はそばにいるわけではなく何かを待っているかのように一階をうろうろとしているようだ。SATは周辺を取り囲むように配置している」


「それなら私たちが突入しましょう。それで犯人を確保。確保した後に人質を救出といった計画でどうですか?」


「君がそういうのならそれでいこう」


「司令官、こんな子供に作戦を任せるというのですか!これは職業体験ではなくて現実なんですよ!?」


「寺田君、人のことを見た目で判断するのはよくない。こう見えても彼は治安部隊パブリックオーダーの東京支部指揮官だ」


「それでも…」


「それならこうしませんか?私たちが突入に失敗したなら今回の件の指揮権をSATに移しましょう」


「その突入が失敗したら人質はどうするんだ」


「大丈夫です、私たちの失敗というのは中に侵入する前に判断できますから」


そういうと九条君はテントから出ていく。もちろん俺たちもそれに続く。


「弓削さん、大丈夫なんですか?SATとの関係は重要なはずでは?」


「あぁ、大丈夫だ。滝口司令官とは懇意にしているし、今回のことを見ればあの寺田っていう人も納得するはずだ」


そういうと弓削さんは瀬霜さんと一緒に装備の確認に向かっていった。


「新人君、君はこっちだよ」


そういわれて俺は菖蒲さん、九条君と一緒に俺たちの司令部に向かった。


そこはSATの人が司令部として活用している場所だが九条君の顔を見るとわざわざ席を譲ってくれる。そして2人はそれを当然のことのように何も反応せず持ってきていた自前の機器を設置していく。


「それじゃ、準備ができ次第はじめようか」


「了解です。こちらはすでに配置についています、菖蒲の準備次第です」


「こっちも大丈夫だよ。それじゃ、カメラもオンにするね」


そういうと部屋にあったモニターに弓削さんと瀬霜さんボディーカメラが映される。


「準備できたか?」


「うん。できたよ」


「それじゃ、今から突入を開始する」

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