第7話 歓迎会

例のマニュアルを見つけてからもう3時間もたった。なのに全然進んでいない。こんだけ太いのなら図とかグラフとか写真とかが豊富に入ってるのかと思ったらそういうのも全くない。完全に文字が羅列されているだけ。


というかここまで文字が詰め込まれていると読みずらい。もうちょっと遊び心が欲しかったな。


それにこれを一日で読み終わるなんて無理。しかも内容だっていまいちよくわかんないことしか書いてない。「大口径はどんな時でも最強である」とか頭おかしいだろ。どんなトリガーハッピーが書いてるんだよ。確かに威力は高いけど時と場合によるだろう。


マジでめちゃくちゃすぎる。まさか適当なことを書いてるやつを読ませてるってわけじゃないよな。


もう12時。そろそろお昼休憩にでも入ろうかな。たぶん俺は今日これを読むのが仕事になってるはずだから適当にお昼を食べてから適当にまた始めればいいと思うしご飯でも買ってくるか。


さらにそれから5時間がたった。もう午後5時半。それなのにまだ4分の1もまだ読めてない。相変わらず頭のおかしいことしか書いてないしだいぶしんどい。というかこんなのがマニュアルとかマジでこの部隊大丈夫か?


「剣持、どこまで読めた?」


弓削さんがそう聞いてきた。


ちなみに弓削さんは向かいの席でずっとパソコンに向かっていた。もしかしたらここは意外と書類系の仕事が多いのかもしれない。


「まだ4分の1も読めてません」


「お前…そこまで読んだのか。普通にすごいな」


「え?マニュアルってことは全員読んでるってことじゃないんですか」


「そんな頭のおかしいのがマニュアルなわけあるか。これは毎年恒例の新入を歓迎するドッキリだ」


「は?」


「いやー、新人君まじめだね。私なんてそれ読めって言われたけど全く読まなかったよ」


「剣持君も大口径こそ正義に共感してくれたのかな?やっぱり大口径は最強だよね」


「瀬霜、あれを書いたのはお前だったのか…今すぐにあれから削除しよう。危険思想が部隊に広がる」


「ちょっと、俺が言ってること何も間違ってないじゃないか。それなのになんで消すんだよ」


「すべてが間違っているからだ。大口径なんてめったに使うもんじゃない」


「えーーと、どういうことですか?」


「すまんな、これがうちの通過儀礼なんだよ。マニュアルと言って俺たちが適当に書いた文章を読ませるっていうやつだな」


「なんで、そんな悪趣味な通過儀礼を…」


「さぁな、俺がいるときにはもうあったから知らん」


「そんなことよりも早く歓迎会行こうよ!私このために今日は早く仕事やったんだよ?」


「そうだ。俺だってそれのために大嫌いな掃除をやったんだぞ」


「お前たちは普段からそうしてくれ…」


そういう弓削さんは頭を押さえていた。どうやら普段からこの人たちストレスをかけられているようだ。


「それじゃ、俺は隊長を呼んでくるからお前たちはそこでおとなしくしてろ。間違っても余計なことをするなよ」


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