第4話 メンバー②

「すまんな、あれでもここの最古参なんだよ。任務中は頼りになる。…事務作業なんかはもっぱらだめだがな」


「えーーと、…あの女子高生が最古参なんですか?」


「あーー、そういえば説明してなかったな。菖蒲は5年ぐらい前からここに配属されているんだが、初めての任務の時にいろいろあったらしくてな。それでもともとここに配属されていた警官がみんな殉職してしまったってわけらしい」


「そういうことで菖蒲が最古参になったんだよね」


「えっ?」


いきなり下から声が聞こえると思ったらなんか机の下から出てきてる。…え?どういうこと?なんでこの人机の下に入ってるの?もしかして今、避難訓練でもやってる?というかなんでこの人のことまったく気づけなかったの?気配とかさえも全くなかった。


「瀬霜、お前はまた机の下で寝てたのか。…そろそろ帰ったらどうだ?もう1か月近く帰ってないんだろ?」


「いやー机の下が快適すぎて帰りたくないんだよね。シャワーだってあるし帰る必要を感じないし、なんならこっちにいろいろな荷物持ってきてるからこっちを家っていっても過言じゃない」


「というよりお前の机の周りに生活感が溢れ出ているんだよ。さっさと帰れ」


「ひどいよ、弓削君。これでも君の先輩なんだよ?」


「俺は自分よりもだらしない生活をしている人を先輩として認めない」


さっきから弓削さんと瀬霜さん?がずっとしゃべっていて気まずい。俺はこのじゃれあいをどんな目で見てたらいいの?コントを見るような目?それとも先輩たちを敬うような目!?


「あー、すまんな。瀬霜がだらしなさ過ぎて思わず口を出してしまった」


「君が噂の新人君だね。俺は瀬霜諒せしもりょう。なぜか菖蒲の後輩になってるけど菖蒲の同期だよ」


「いや、それは違うだろ。菖蒲のほうが先輩だ」


「それが間違っているって言ってるんだよ。実際ここに配属されたのは菖蒲とおんなじ年だし」


「それでも瀬霜は一回ここを追放されただろ。実際は俺の1つ上だ」


「はぁ、これだから弓削君はわかってないね。俺は追放されたんじゃない。ただちょっと警察官学校に研修という形で編入されていただけだよ」


「いや、それは上から学びなおせって言われたってことだろ」


「そんなことより、歓迎パーティーはいつやるの?」


「そんなことじゃないんだが…まぁ、歓迎パーティーは今晩の予定だが」


「マジで?めっちゃ楽しみなんだけど」


「瀬霜はここら辺を片付けない限り参加を認めない。そもそもどんだけ広い範囲使ってんだよ。ここはお前の部屋じゃなくて仕事場だ。そして共同スペースだ。お前の物じゃない」


「えっ、ちょっとそれは横暴だよ。毎年毎年俺はこれを楽しみに生きてるんだよ!?」


「それならちゃんと片付けるんだな」


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