第15話 情報が集められない

 私は、手話に興味を持ちました。だから、言語としての手話を勉強していたのです。

 それが今では、とても楽しく思えるようになっていました。ですが、手話を使っている『ろう者』のことを、全く知ろうともせず、手話を勉強するというのは、何か違っていたのかもしれません。


 ろう者の方々の何割かは、同じ日本に住みながら、手話という情報伝達手段に行き着きました。当然それには、なにがしかの理由もあるわけです。


 そもそも、ろう者や手話について、知る方法が少ない事が、問題の一つでした。

 探そうと思わなければ、ろう者についての情報を、目にすることは、ほとんどありません。

 探しても、正確な情報へたどり着くまでに、かなりの時間を使います。

(私の場合、網膜剥離になり、レーザーで治療してから、ネットを長時間見られないということもありますが)


 本も、専門書のような物がほとんどです。しかも、あまり買う人がいないからか、一度売り切れると、増刷しないものが多い。

 何度か興味のある本を、ネットで検索したのですが、売り切れというのが本当に多くありました。

 中古で探しても、なかなか見つかりません。


 聴覚障害者についての本が、なせ少ないのか。もちろん、買う人が少ないからというのはあります。

 あと、もう一つの理由は、症状が多種多様だからかもしれません。

 全く聞こえない人もいれば、低音のみ聞こえない、高音のみ聞こえない、微かに聞こえるだけの人もいる。

 音が歪む人も、機械を使えば認識できる(音として)人もいます。

 物音は聞こえる(完全ではない)けれど、声がよくわからないという人もいるようです。

 聞こえ方は、人それぞれ。だから、ろう者同士でも、わかる部分もわからない部分も出て来て当然。

 それを全てカバーして書くのは無理があるし、どれかに特化して書くと、あまり売れないということでしょう。


 聴覚障害者は、日本で300人に1人くらいの割合だと言われています。(近年では難聴者が増えてきたと言われています)

 これを多いと思うか、少ないと思うかは、人それぞれですが。

 少なくとも、圧倒的少数派である彼等(彼女等)が、聴者と一緒に生活していく上で、全く差別を受けなかったとは、考えにくいことです。


「電車に乗って『ろう学校』へ行く途中、いつも叩かれたり、押されたりした」

「手話をしているのを見られて、バカにされた」

 とは、ユーチユーブで ろう者の人が語っていたことです。


 聞こえなくても、口の形で「バカ」と言っているのは、わかります。

 動画で見ただけなのですが、口の動きを見るだけで、まるで聞こえているかのように読みとる人(ろう者)もいました。

 ここまでのレベルは、少ないにしても、ろう学校で口話(言葉を発する)を習うところが多かったようです。


 聞こえないからといって、全く分からないわけではありません。特に、悪意のある言動に対しては。


口話こうわは、唇や口の形、舌の位置(上顎につける、つけない等)など、1音ごとに覚えなければなりません。残念ながら、練習すれば誰にでも出来るというものでもないです。

 読唇どくしんは、唇や口の形などで、何を話しているか読みとる方法です。これも練習が必要な上に、人によって口の開き方なども違うので、努力だけではどうにもならない部分があります。

 いわば、正解を知らないのに、答えを探り当てるのと同等。ただただ頭が下がります。

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