第10話 片手で億まで数えてみる

 手話ポエムのお陰で、モチベーションの上がった私は、数字について勉強することにしました。

 何時とか、何個とか、何月何日とか。単純に、数が伝えられないと、不便だと思ったからです。


 普通は、数字を手で表すというと、人差し指から順番に、指を立てていきますよね。

 人差し指、中指、薬指、小指、そして親指。片手で『五』まで数えられます。

 それ以上になると、反対の手を使うしかありません。両手を使っても、数えられるのは、基本的に『十』までです。

 そう習ってきた私は、手話の数字表現を見た時、ちょっとした衝撃を受けました。

 だって、片手で『百』でも『千』でも数えられるのですから。


 初めて、手話で『七』を見たとき、それが数字を表しているとは思いませんでした。

 一.二.三.四の数字は、通常の表現の仕方と同じです。人差し指、中指、薬指、小指を順に立てていくやり方でした。


『五』で親指を立てるのは同じですが、その親指を水平にして、人差し指、中指、薬指、小指は握ってしまいます。


『六』は、親指を垂直に伸ばして、人差し指は水平に伸ばします。(他の三本の指は握ったまま)


『七』『八』『九』は、それに中指、薬指、小指と、追加していきます。(親指は垂直のまま)


 つまり『九』の時は、指を全て開いた、パーの状態です。(親指以外の指と指の間は開きません)


 だったら『十』はどうなるかというと、人さし指だけ垂直に立てて、その人差し指の関節を、半分くらい(鉤爪のような形)曲げます。『二十』だと人差し指と中指を、同じように曲げるのです。

 つまり、一桁の数字の時に表した指が、曲がっていたら、それが十の位だということになります。


 例えば『六十二』だとすると、『六十』を表して(垂直な親指と、水平な人差し指を曲げる)から、同じ手で『二』を表す(人差し指と中指をのばす)


 たとえ、百、千、万、億と、単位が上がっても、順番に表現していくことで、片手でも表すことが出来るわけです

(百は、斜め下から水平まで数字を振りあげます。

 千は、数字を上下に一度振ります。

 万は、数字を表した後、手を開いてパーにしてから閉じる。その際、手は握るのではなくて、五指を合わせます。指文字の『お』と同じです。

 億は、数字を表した後、手を開いてパーにしてから閉じる。千の時と違って、完全に握ってグーにします)


 片手で、しかも声を出さずに、これだけ複雑な数字が送れるのは、画期的だと思いました。

 もちろん、相手が手話の数字を理解できれば、という条件つきではありますが。

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