第7話 アルファベットの指文字

 指文字には『かな』と『アルファベット』があります。

 そこで、使う頻度を考えて、かなの指文字から練習を始めました。


 ですから、あまりアルファベットの指文字を、見る機会が無かったわけです。

 ところが、ある日なにげなくアルファベットの指文字を見ていて、気がつきました。

 アルファベットの指文字と、かなの指文字には、同じ形のモノがあると。

 例えば


 指文字『あ』→『a』と同じ

 指文字『い』→『i』と同じ

 指文字『う』→『u』と同じ

 指文字『え』→『e』と同じ

 指文字『お』→『o』と同じ


 海外の指文字が、先に出来(統一された)ました。そして、日本へ来たわけですから、参考にして当然です。

 かなの指文字を覚えると、アルファベット(指文字)を幾らか覚えてからのスタートになるのは、嬉しい誤算です。


 かなの指文字は、スピードさえ気にしなければ、出来るようになっていました。

 そうなってくると、欲が出てくるもので、手話も覚えたくなってきます。

 ただ、手話に関しては『同じ言葉なのに、いくつも別表現の手話がある謎』が残ったままでした。


 覚えても無駄になるかもしれません。

 もし、間違って覚えたら、修正する(覚え直す)のに苦労するのは、目に見えていました。

 外国語でも、間違って覚えた単語を、本来の単語で覚え直すのには、本当に苦労しました。

 繰り返していくうちに、どちらが正しいかが、わからなくなってきて……本当に嫌になります。

 だから、なるべく無駄にならないであろうものから、勉強していたのです。(ワガママ)


 アルファベットの指文字も、インターネットで調べて、違う表現がないかを確認してから、勉強を始めました。

 だから、アルファベットの指文字表現は、一つだと思い込んでいたのです。

 なのに……。


 不定期に放送される、手話の初心者向け番組を見ていたところ、たまたまアルファベットの指文字練習をしていました。

 ろう学校の生徒が、聴者のアイドルに指文字を教えるコーナーのようです。


「これがAです。これがBです」


 と、画面に映し出された指文字の型は、私が覚えたものと、違っているではないですか!

 例えば、私が覚えたAは片手で表現(拳から親指だけを水平に伸ばし、手の甲は自分側)します。

 ですが、番組でやっていたAは、両手を使って(左手は人差し指だけを伸ばし、右手は人さし指と親指だけを伸ばした状態のものを、組み合わせる)いました。


 Bも両手、Cは片手で……


「あっ…」

 よく見ると、私の知らなかったアルファベットの指文字が、大文字(ABC)のアルファベットの形を模しているように見えたのです。


 私の知っているアルファベットの指文字は、アルファベットの小文字(abc)を模したものだと、本に書いてありました。

 理屈として、小文字があるならば、大文字があっても不思議ではありません。


 ただ、私の買った本には、アルファベットの小文字しか書いていませんでした。大文字の存在については、書かれていません。

 これは、手話をする人からすれば、常識なのでしょうか?

 ※ 最後の注釈を参照


 こんな些細なことでも、手話を挫折する要因になることだって、あるかもしれないのに。

 なんだか残念です。

 私の悩んでいる『同じ言葉なのに、いくつも別表現の手話がある謎』も、ひょっとしたら同じようなものなのでしょうか?

 事実がわかれば、単純なもののような気もしてきました。


 ※注釈

 後に、アルファベットの大文字と小文字ではなく、『アメリカ指文字』と『日本式アルファベット』と呼ばれるものであることがわかりました。

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