第5話 指文字について考える

『指文字』は文字であって、『単語』でも『文章』でもありません。


 例えば、手話なら『おはよう』という手話があります。それを『指文字』で表現すると、

『お』『は』『よ』『う』

 と、四文字表現しなければいけません。

 とても面倒だし、表すのにも、読み取るのにも時間が掛かってしまいます。

 けれど、利点もあります。


『手話』は、単語ごとに『手話』を覚えなければいけません。

 単語の数だけ、手話があるような(実際は、もっと少ない数で表現できます)ものです。

 それに比べて、指文字は言葉を並べるだけなので、五十音と少し覚えれば、あらゆる言葉が作れます。

 濁音や半濁音などは、五十音の指文字を、決まった法則で動かすだけです。

 指文字は、手話と比べて、覚える数が圧倒的に少なくて済む。それが利点でした。

 手話を知らなくても、とりあえず(わかりにくいですが)伝えることが出来るなら、覚えて損はないでしょう。

「ひょっとして、指文字って最強なのでは?」と、一時期は本気で思ったくらいでした。

(いまは、手話の方が、はるかに便利だとわかります)


 私は、あまり暗記が得意な方ではありません。ですから、何かを覚えなければならない(単語や専門用語など)ときは、とにかく繰り返していました。

 何度も書いたり、何度も声に出して言ってみたり。


 繰り返し、繰り返し。


 もっと良い方法があるのだとは思います。けれど、私が指文字を覚える為にしたことは、やはり繰り返しでした。

 まず、指文字をイラストにして、自分の手帳に描きます。

 それを通勤時間や、休憩時間に見ながら、『あ、い、う、え、お』と、コッソリ指でやっていました。

 本に載っていた指文字を、手帳に写すのは大変でしたが、思わぬ収穫もありました。

 指文字には、全て語源があるのではないかと、思い当たったのです。


 最初に気がついたのが『お』の指文字でした。

 親指とそれ以外の四指で筒を作ると、それが『お』です。


 これってアルファベットの『O』では?


 次に『き』の指文字。

 これは中指、薬指、親指を合わせて、人差し指と小指だけをピンと立てる。

 みなさん一度は、やったことがあるのではないでしょうか?

 影絵でやる『キツネ』です。キツネだから『き』を表す指文字なのでしょう。


 そう思って見てみると、指文字の50音は、ほとんどが何かの形を表しているようです。

 特に、アルファベットの形から来ているモノが、多いように思います。

 考えてみれば『手話』や『指文字』は、かなり新しい言語(特に日本は)だったはずです。

 だとしたら、わざわざ覚えにくい言葉を作るとは、考えにくいですね。

 何かしら、法則もあるに違いありません。

 そう考えたら、なんだか少しワクワクしてきました。

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