第4話 やっと本が届いた

 一週間ほどして、待ちに待っていた手話の本が届きました。

 ですが、その頃には手話に対するモチベーションが、かなり下がっていたのです。


 理由は、同じ言葉なのに、違う手話表現という動画を、何個も見つけてしまっていたからでした。

(どちらが正解かはわかりません)

 1個や2個なら、大して気にしなかったと思います。

 ですが、10個を超え、20個を過ぎた辺りから、一気に困惑が広がりました。

間違った手話を、覚えているかもしれないという不安です。

 時間と労力を使って、ムダなことをしているかもしれない。そう考えてしまうと、モヤモヤした気持ちが、際限なく広がっていきます。

 それは確実に、やる気を奪っていきました。


 もちろん、インターネットの情報には、いい加減だったり、悪意のある発信者がいることは知っています。

 けれど、私が検索した動画の発信者は、手話に関連した仕事をしていたり、ろう者のサポートをなさっているサークル等のページでした。

 なのに、手話表現が発信者によって、こうも違うものなのかと。

 いったい、誰(何)を信じたら良いのか、戸惑うばかりでした。


 届いた本は、初心者向けの辞書のようなものです。

 写真や矢印などを使って、手話のやり方が表されていました。手話を使える人が作っているだけあって、かなりわかりやすくなっています。


 ペラペラと、ページをめくってみました。


 そこに疑問の答えが、なにかしら書かれているのでは? と期待して。

 けれど本に描かれていたものに、答えは載っていません。やはり、そこまで甘くはないようです。

 インターネットで調べたものと、同じ表現もあれば、全く違うものもあります。

 なんで、こうも調べるモノによって違うのかがわかりません。


 本をもう一度、最初のページからめくってみる。

 すると、見慣れない『指文字』という言葉が目に入ってきました。

 どうやら、手話は『単語』をメインに表現するもので、指文字は『文字』を表現するもののようです。

(手話が『漢字交じりの単語』、指文字が『ひらがな』のようなもの)

 かなの(後に、アルファベットの指文字があることを知りました)『指文字』については、インターネットも本も、同じ表現になっていました。

 ひょっとして『指文字』さえ覚えれば、手話が出来なくても、聞こえない人とコミュニケーションをとれるのではないでしょうか?


 私は、まず指文字を覚える決心をしました。

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