それは決して不幸ではなく

元橋ヒロミ

プロローグ

『エネルギー保存の法則』というものがある。

 たしか『孤立したエネルギーの総量は変化しない』というようなものだ。

 これを講義で聞いたとき、脳内をとてつもない衝撃が走った。

 僕は、とんでもない事実を知ってしまったのではないだろうかと。

『エネルギー保存の法則』は地球規模……いや、宇宙規模で成り立つのではないだろうか。

 だとしたら『偶然』や『運命』と呼ばれているものも、これに属するかもしれない。

 そこに『幸せ』とか『不幸』という感情の入る余地はないだろう。

『エネルギー保存の法則』は現象であり、感情の入る余地はないのだから。


 コメカミの後ろに、トゲの刺さったような感覚。

『アレ』が来たのだとわかった。

『こちら側』へ来たのだ。

 だが、来たとわかった時には、もう『2つの融合』は終わってしまっている。犠牲者の近くで、次の『選択の時』を待つしかない。

 問題は、犠牲者が誰なのか探さなければならないことだ。

 近づけば、まだ匂いは残っているだろう。

 僕も所詮は『こちら側』の人間だ。どう頑張っても『あちら側』へは行けないし、見る事も出来ない。

 強引な手段を使うしかないかと、思い始めた時だった。

「やめて! どういうつもりよ!」

 若い女性の声がした。

 

 


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