呼吸。

識織しの木

呼吸。

雪降りにはしゃぐ心は遠くに眠り


我庇う芯に生きたる薄ら氷を


春一番大きな魔物の溜息か


1年はあっと言う間だねぇ桜


クローバー絨毯の上の子どもたち


気の早い風鈴薄紅に揺れ


梅雨明けてすこうし寂しい傘の色


夏の虫鳴くを聞く線香の匂い


帰り道子どもは夏を駆け遊ぶ


網のないメロンスプンで掬う夜


神の鳴る山を窓辺で眺めたり


秋の日は釣瓶落としと祖母の声


死人花 足元あもとに墓前の香り立つ


秋風は予感とともに曇り空


星流るいつかと同じ空静か


あと何回金柑囓る祖父の庭


ぱりかさり落ち葉の元気のよいことよ


寒さには強さがあると高架下


寒風に指袖の中かみかくし


記憶には学びの冬を闘った

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