第28話 忍び寄る

「おじゃましまーす…」

立花が小柳に気持ち良いツッコミを決めていたその頃、小柳家のドアを音も立てずに静かに開けた人物は水族館デートの時の気合いの入った服装とは打って変わってデニムパンツに真ん中にロゴの入った白Tシャツを着こなす普段の私服姿の中村だった。

玄関で横一列に整理された靴の中でスニーカーを確認して立花が来ている事に一安心して家に上がる。

落ち着きなく両腕を上げて抜き足差し足忍び足で行き来する中村はまるで不審者だ。

(駐車場に車はなかったから卓也ママはお出かけ中…部屋は2人きりだよね。あの誕生日から卓也と何だかお互いに距離が空いたような気がして会うことも気恥ずかしくて...今は歩美ちゃんにヤキモチ妬くよりも私が卓也と2人きりになることの方が気まずかったから居てくれてホント助かる。今日中に元通りに…違う。それより少しでも先にいけたらいいな)

階段を一段一段と上がる中村の鼓動は小柳の部屋に近づくにつれて自然と早くなっていた。


「だから事前に文句言うなって言っただろ?」

「これは文句じゃないわ!私が言いたいのは香水を付けてる首元を直接嗅ぎなさいって話よ。その嗅ぎ方、あれよ。その、思い出すのよ…」

強気で小柳に言葉を発していた立花の表情が徐々に悲しみで曇って弱々しくなる。

「物理の実験か?中学の時にアンモニアを…」

「違うわよ。小柳君には私が昔イジメられてた話はしたでしょ?色々あったけど、その1つにデブは臭いってクラスメイトに今みたいに嗅がれて笑われてたのよ。…ま、まあ?今はこんなに痩せて汗かく私すらも可愛いし?香水だってつけてるんだから大人で魅力的な良い匂いのはずよ!ね!」

立花は重い空気を察して元に戻すべく自分の気持ちを持ち上げようと無理して強がり笑ってみせる。

「そうだったのか。立花、辛い気持ちを思い出させたみたいで悪かった。俺の言葉では慰めにならないと思うけど、俺は立花に出会ってから1度も臭いなんて感じたことないから。むしろ近づかれる度にいい匂いだなと思ってたよ。だから香水なんてつけなくても十分だ」

「は、はぁ!?そういう事じゃないわよ!さらにいい匂いだって思ってもらいたいのに十分って…バカじゃないの…バカ!十二分に思いなさいよ!」

「十二分かよ!これよりもっとか…無茶言うなよ」

「だから早く直接嗅ぎなさいって言ってるの!早くしないと匂いが消えちゃうかもしれないじゃない」

「何、まだやるのか!?…はぁ。そうだったわ、立花は1度決めたら意地でも諦めないんだよな。わかった。早く終わらせて勉強するぞ」

「もちろんわかってるわよ。だから匂いがわかるまでやめたらダメだからね!」

横座りの状態のまま顔を上げる立花の膝前の床に小柳は右手を置いてバランスを取ると首元にそっと自分の顔を斜めに近づけて鼻に神経を全集中して嗅ぎ始める。

小柳の生暖かい鼻息が立花の首元に触れるとこそばゆい立花は思わず笑ってしまう。

「何で笑うんだよ…?やっぱりここまでしてもわかんねえって…今回は諦め…」

「だったらもっと顔を近づけなさいよ…」

1度小柳は自分の顔を立花の首元から離して話そうとするが食い気味に立花の両手で顔を押さえつけられて体重を預けるかたちになると至近距離ではない、むしろゼロ距離。小柳の鼻は立花の首元に軽く当たっていた。

この状況と先程の小柳の発言に羞恥心が芽生え始めた立花は隠しきれない自分の表情を小柳に見られる事に恥ずかしさを感じために起こした行動であったがその行為が更に自らの首を絞める。

仮に小柳が香水の匂いに嗅覚が反応した場合、立花の吐く息の匂いにも嗅覚が反応してしまうと。

立花は体に力が入り必死に呼吸を止めて早く終われと矛盾した思考で天井を1点に見つめていた。

その時だ。コンコン。

部屋のドアをノックする音が静かな部屋に鳴ると小柳は体が大きく反応してその場で素早く頭を上げてしまい立花の顎に頭突きを食らわせる。

「あがっ!」

脳全体に痛みと衝撃が立花を襲うと後ろのベッドの方へ対戦格闘ゲームのKOされたキャラクターのように倒れてしまった。


「は、はい!今行くから!少し待ってくれ!」

その場で小柳は立花を心配しつつ慌ただしく立ち上がってドアに向かって急ぐと足音が中村の耳に徐々に大きく近づいて聞こえてくる。

(大丈夫、いつも通りに。意識したら負けだ。この前のことはなかったように…できるかな?あれ!?どうしよう!第一声あんなに考えてきたはずなのに忘れちゃったよ...!)

ドアが開くと中村は息を切らして目を丸くする小柳よりも隙間から見えるベッドの方に頭が寄りかかり顎を手で押さえて痛そうにしている涙目の立花に目がいってしまう。

「あ、ふぇふひぃひゃん(恵美ちゃん)…」

「何があったの!?歩美ちゃん大丈夫!?」

中村は勢いよく小柳を突き飛ばして立花に近づくと顎の痛みで上手く喋ることができない立花は片手を使って必死にジェスチャーで伝えようとする。

「え、卓也が?…卓也の頭?が…歩美ちゃんの顎?…を叩いた?違う…あ、頭突きした?」

立花は中村に親指を立ててグッドポーズで正解だと伝えるとゲーム感覚に陥っていた中村は思わずガッツポーズをする。

「当たり!?やった!歩美ちゃん伝えるの上手…ってどういうこと!?何で卓也が歩美ちゃんの顎を頭突きしてるの!?」

(なんて頑丈な石頭よ…一瞬走馬灯が見えたじゃない。私の可愛い顎に頭突きするなんて何考えてるのよ。あんなに驚いて...まるで私たちが変なことしてたみたいじゃない…)

どこからどう見ても十二分に変なことである。

「や、やあ恵美…その、本日はお日柄もよく…」

やはり小柳は中村に対してまだ変に意識してぎこちない表情を浮かべてよそよそしく話し掛ける。

「そんなことより歩美ちゃん痛がってるよ!?早く袋に氷入れて持ってきて!冷やさないと!」

「はい!」

小柳は急いで自分の部屋を飛び出して食卓の冷蔵庫の冷凍室に氷を取りに向かった。

「女の子の顔に卓也は何してるの。歩美ちゃんホントに大丈夫?原因はケンカでもしたの?」

「心配ありがとう恵美ちゃん…いたた、ケンカはしてないわ。ちょっと香水の匂いで…」

「香水?…ホントだ、凄くいい匂いだね」

中村が立花の顎を押さえていない方の片手の手首を嗅いで褒めてくれた。その時に気づく。

(この手があったじゃない!!はじめから首元じゃなくて手首を嗅いでもらってたらこうなる事もなかったわ!恵美ちゃんがもう少し前に来てくれてたら…いや、恵美ちゃんが来なかったらこんなことに…でも心配してくれてるしそんな事考えたらダメよね)

立花は手首につけた香水を首元に広げるようにつけたが慌てて実行した作戦は不十分で手首の存在をすっかりと忘れていたのであった。

「でしょ?この香水の匂いをわかってもらおうとしたら小柳君に頭突きされたのよ…」

(卓也ってそんなに香水嫌いだったかな?それとも歩美ちゃんがしつこく嗅がせようとしてきた?でも卓也が頭突きするってよっぽどだよね。今まで頭突きどころか手を出してる姿なんて見たことないよ)

「持ってきた!これ。立花、本当に悪かったな…」

部屋に戻ってきた小柳はビニール袋に氷を詰めてタオルで巻いたものを立花に渡す。

「全く、いい石頭持ってるじゃない…」

立花はボクサーのパンチを褒めるトレーナーのような言葉を吐くと受け取ったタオルを顎に当てて冷やす。顎よりも体が熱くなっていた立花に効く。

一段落つくと立花は眠ったように目を閉じて黙り込んでしまう。小柳と中村は目を合わすと気まずそうに逸らして不穏な空気に部屋はより暗く感じた。

(勉強は捗らない、匂いはわからない、顎の腫れは治まらない、恵美ちゃんの登場でもう2人きりじゃない…なんなのよこれ。今日に向けて色々と考えてきたけど何も出来そうにないわね。いや、まだ諦めないわよ…残機はまだあるわ)

(歩美ちゃんが黙ってるから話す相手が卓也しかいない。せっかくこの場を上手く利用しようと...ううん、普段通りに。でも...いつもみたいに漫画で時間を潰そうと思ったけど今日に限って漫画が卓也の後ろの棚に綺麗に整理されてる…だから逃げちゃダメだ。何か話題を…)

葛藤する中村は何か行動を起こさなくてはならないと感じ辺りを見渡すとミニテーブルの上に広げてある数学の教科書に目が向かう。

「ん?これって、今数学の勉強してた?私でいいんだったら教えてあげよっか?」

中村は立花に話し掛けるが、次なる作戦を集中して困惑した表情で考えていた立花には中村の優しい声は全く届いていなかった。

(ここで無視!?あれ、歩美ちゃんに頭突きしたの卓也だよね?私じゃないよね!?もしかして、私がここに来たから怒らせちゃった...?そうだよ。歩美ちゃんも卓也のこと好きだもん。2人きりで居たい気持ちは一緒だよね)

(恵美を無視する程に思ってたより立花は重症なのか?決してわざとではなかったが俺のせいで事態が最悪になったのは事実だ…。今は勉強会どころじゃないよな。土曜日でも診療している病院を探さないと…)

勉強机前の椅子に座った小柳は短パンのポケットからスマホを取りだしてマップアプリを使用して休日でも診療可能な病院を急いで片っ端から探す。

(こうなったら頑張って卓也に話…ってスマホ見てる!?あんなに真剣な顔久しぶりに見たな。いいな。この中に私の入る…はは。そっか、そうだよ...完全に私がお邪魔ってことだ。急に家に押しかけて何考えてたんだろう。先にいけたら?こんな自分勝手な私、好きになるはずないのに...)

小柳がスマホの画面を指で触れる音しか聞こえない部屋で中村は悪い方向に思考が偏り胸が締め付けられる気持ちでいると立花は体を起こして氷嚢を外してアイシングを止める。

「さあ勉強再開よ!せっかく恵美ちゃんも来てくれたんだしこのまま帰さないわよ?2人で私を補習のない夏休みに導きなさい!」

「私もいいの…?」

「その反応ってことは…もしかして恵美ちゃんって私より頭悪いの!?」

「安心しろ、恵美は立花よりも頭良いから。それより顎の方は大丈夫か?俺のせいだし一応立花が病院に行くならと思って数件探して見つけたけど」

「病院?この程度で行くわけないわ。私の顎は他の人より可愛くて丈夫に出来てるのよ!ママありがとう。さあ早く勉強始めるわよ、小柳君も恵美ちゃんも私の隣に座りなさい!」

立花に言われるがままに2人は立花を挟むように隣に座る。

こうして3人での勉強会が始まった。


勉強会が始まってから1時間が経過する。

何か起こるのではと思っていた中村も自然と立花の先生代わりとなって真面目に勉強を教えていた。

立花は1つの事にしか全力を注げない。それが今は勉強になっているため作戦は何も実行できていない状況だった。実は作戦がまだ浮かんでいない。

「出来ました!どうですか...?」

「歩美ちゃん!...合ってるよ!私も嬉しい!」

2人は仲良くハイタッチをして喜びを共有する。

「恵美ちゃんの教え方は本当にわかりやすいわ!これは先生…いや、教科書超えね…!」

「ホント?歩美ちゃんは持ち上げるの上手いなあ!まあ理数系は得意な方だし人に教えることで自分もより理解できるからウィン・ウィンの関係ってね」

「じゃあ次は物理ね!恵美教科書、よろしくお願いします!」

「それはちょっと違うよ!?まだ恵美先生の方がいいな!」

立花が鞄から物理の教科書を取り出そうとしているとある1つの事に気づいてしまう。

(そういえば小柳君を置いてけぼりにしてたわ!)

中村の教え方が上手で聞き惚れて忘れていた立花は小柳の方に顔を向けると1人で黙々と勉強をしていた。1時間前に発言してから1度も話していない。立花は声を掛けようと試みる。

「暇そうだし小柳君も次は恵美ちゃんと一緒になって私に教えなさいよ」

「いや、俺はいいよ…恵美に教えてもらえよ」

「だね、数学は私が教えたから次は卓也の番ってことで交代しよ。私はスマホでも見てるからさ」

「何で2人いるのに1人にしか教えてもらえないのよ!このマンツーマンシステムなんなの?」

「別に何もないよ!ね、卓也...?」

「お、おう。立花も2人から同時に教えてもらうより1人に集中的に教えてもらった方が理解しやすくていいだろ?立花のためだ」

(今だってそうだし今日2人が目を合わせたところを1度も見てないわよ。これって私に攻める機会を与えてくれてるってこと?誕生日の事も上手く聞けてないし...ひとまず数学の勉強が終わったから作戦を考える時間が欲しいわね…)

「そうなのね。物理の勉強の前にちょっと御手洗行きたいんだけどいい?」

立花はトイレに向かうためその場を立ち上がろうとするが中村は2人きりにならないようにと立花の腕を力強く引っ張り止める。

「じゃあ私も行こっかな!何処にあるかわからないよね?私が案内するね」

(恵美ちゃんも一緒に行く気なの!?せっかく1人で作戦を考える時間がトイレくらいしかないと思ったのに…考えさせないつもりね)

中村に連れられて階段で1階に降りて階段横の廊下の突き当たりにあるトイレに着いた。口頭で理解できる場所にトイレはあった。

「私今までトイレに友達と行くことはあったけど入ったことはなかったわ…恵美ちゃんはこういうこと平気なの…?」

「え!?私は手を洗ったら戻るよ?」

「あ、そうよね!てっきりトイレに入ってくるものだと…じゃあ私は入るから先に戻ってていいわよ」

立花がトイレに入って扉を閉めようとすると中村の小さな声で「ごゆっくり」と聞こえた。


小柳の部屋に中村が入ると気づかれないように両手を後ろに回して部屋の鍵を閉める。

中村は先程まで立花の座っていた場所に座るが小柳は何も言わずに勉強を続けていた。

(これで2人きりになれたことだし今日の目的は果たさないとこのままじゃ帰れない…明日はない)

「歩美ちゃんを案内してきたよ」

「そうか、ご苦労さん」

「うん。ねえ卓也、この前の誕生日のことなんだけど…」

ノートに授業の復習で書き込んでいた小柳のシャーペンの動きがピタリと綺麗に止まる。

中村の方に顔を向けると、今日同じ時間を過ごしてからようやくしっかりと目が合ったことが嬉しかったみたいに微笑む。

「どうした…?」

「うーん。あのね、この前嘘かホントか当ててもらったゲームというか発言があったでしょ…?」

「ああ…それか。俺が当てたやつな」

「だね。あの発言さ…その、なかったことにしてくれないかな!?あれはつい出ちゃったというか…あの時のノリ、みたいな?卓也も言われて困ったでしょ!?私も言ってて自分で困っちゃった!誕生日の力ってやつかな!?ははは…」

「恵美には悪いけど無理だ」

冗談のようにふざけて笑うが目的を果たせて安堵した中村を小柳の強い言葉で弾き返されて動揺して表情がこわばる。

「だ、だよね。さすがに難しかったか…」

「確かにあの時は何も考えられないくらいだったけど、落ち着いて考えてみた時に嬉しかったと気づけた。そんな感情忘れられない、忘れたくないから恵美には悪いけど...まあ、そういうことだ」

はにかみ笑う小柳に中村の表情が一気に柔らかくなり頬が赤くなると鼓動が早くなり息が荒くなる。

抑えきれない気持ちは小柳から顔を逸らして咄嗟に演技をしてしまう。

「喉乾いたなあ!そうだ、近くのコンビニで飲み物買ってこようかな!うん!」

「わざわざコンビニ行かなくてもお茶か水でいいなら冷蔵庫にあるけど持ってくるか?」

「今は甘い飲み物が飲みたい気分だなあ!私ちょっと行ってくるね!」

中村はその場から逃げるように部屋の鍵を開けて出ていってしまった。

「そんなに甘い飲み物飲みたくなるのか?…それにしても立花は戻ってこないな」


その頃立花は小柳家のトイレの中で扉に背中を向けて立ちっぱなしで次なる作戦を勉強で疲労した脳で必死に考えていた。

(あの2人の気まずい空気も吹き飛ばすような作戦を…例えば小柳君に教わるフリをして近づいて、ここで習った数式を…ってダメよ!何で恵美ちゃんから教えてもらった数式がここで出てくるのよ!脳が限界で何も考えられないわ...)

コンコン。小さくトイレの扉をノックされると立花は驚き姿勢を改める。

「歩美ちゃん、私コンビニで飲み物買ってくるけど何か欲しいものある?」

小声で扉の前から中にいる立花に話し掛けてきたのは先程よりも声のトーンが明るい中村だった。

「ナイスタイミングよ恵美ちゃん。後でお金は渡すから私はミルクティーをお願いするわ。真夜中でも紅茶風伝でも何でもいいわよ」

「お金はいいよ。歩美ちゃんが勉強を頑張ってるご褒美だから。ミルクティーね。おっけ」

今の中村は小柳によって気持ちが大きくなっている。中村は立花にミルクティーを頼まれると足早に玄関で靴を履き替えて家を出ていった。

遠くの方で家の扉の開閉音がトイレの中から聞こえると立花の脳内のLED電球が明るく光る。

(あれ?恵美ちゃん出ていったし今この家には小柳君と私しかいないんじゃないの!?これは絶好の機会じゃない!果報はトイレで立って待てってね!)

コンコン!先程の中村よりも強めに扉が叩かれる。立花は中村が今家に居ないことは知っている。

(え、早速小柳君から私に会いたくなってきたじゃないの!?まさかトイレの中で2人きりになりたいってこと!?部屋よりも狭い空間で2人きりになりたいと…待って、ど、どうしよう…)

コンココン。とりあえず立花は笑顔でリズミカルにノックで返事をする。

(落ち着きなさい歩美。ノック音でびびってる場合じゃないわよ!とりあえずトイレで2人きりになってからの作戦を考えないといけないわね!まず狭い空間…この言葉から関連する作戦を…接近戦ならさっきの香水...)

コンコンコンコン!

(どれだけ早く2人きりになりたいのよ!わかったわ!もうこうなったら流れでやるしかないわね!)

「はいはい、今出るわよ!可愛い私に早く会いたいって気持ちはわかるけどいつの間に小柳君ったらそんなに大胆に…」

立花は扉を開けていつものように小柳の目を見て話し掛けたつもりが視線の先には血管の浮き出た太めの首がある。

疲労のせいかと自分を疑った立花は1度目をこすり再度視線を上にもっていくと、そこにはショートカットのオールバックで前髪が少し垂れた状態の目元が鋭く180cm程の紺のポロシャツを着た男性が目の前に堂々と立っていた。

身長差があるため彼の視線は文字通り上から目線。

どこか小柳の面影を感じる。

(小柳君のお父さんだわーーー!!!!!!!)


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