第十話 ギルドへ登録しに行きましょう!


武器屋を後にした俺たちは冒険者ギルドへと足を進める。ドラゴンの件を確認するついでにギルドプレートの再発行も済ませてしまうか。

しばらくしてギルドへと辿り着いた俺は見慣れた扉を開けて中に入る。冒険者の数はそこまで多くないな。受付が空いてるから丁度いい。



「あの、昨日のドラゴンの件について聞きたいんですけど」



依頼の受注だったり細かいことの相談だったりでよくお世話になってたクレアさんの所に行く。



「あら、カインさん!無事で何よりです。話は聞きましたけど、とんだ災難でしたね……」



「まぁなんとか生き延びれたのでよかったです」



「そうですか。あ、ドラゴンの件についてですよね?ちょっと待っててください!」



そう言いながら彼女は急ぎ足で受付の奥へと消えていく。しばらくしてエルメニコさんと中年の男性が奥からやって来た。



「やぁ、君がカイン君だね?話は聞いてるよ。私はギルドマスターのジールニアだ。とりあえず、あそこの席で話そうか」



ジールニアと名乗る人物は先日ヨハンたちが座っていた席を指さしてそう言う。俺もそれに頷き席へと着いた。

それから昨日の件の詳細について確認しあっていく。どうやら俺がギルドに来る直前で調査隊が帰ってきてたらしい。彼らの話では<死の森>の奥でドラゴンの死体を発見したとのこと。【解析アナライズ】スキルによると確かに天龍級だったらしい。



「とりあえずこの件は終了だ。それとそこにいる人がクエラ・ルノーティクスさんかな?今回は王都の危機を救ってくれてありがとう。今までヴラルド王国にいたみたいだから冒険者でもないんだろう?これを機に登録してくれるとありがたいんだが、どうだろうか?ギルドとしてもその方が報酬も渡しやすい」



「……カイン」



確認するように俺を見てくるクルエラ。フードの奥には困惑した表情が伺えた。



「今日はそのつもりで来ました。あと俺のギルドプレートの再発行もお願いしたいんですが」



「わかった、手配しておこう。それとヨハン達の件についてだが、等級をAランクに落とすことにした。このギルドでも有力なパーティだからそこまで厳しい処罰も与えられないんだが、それでいいだろうか?」



「構いません」



この件で[龍を追う剣]はAランクに降格したらしい。ただカルミラも国に帰るって言ってたし、ジルベルトも現在は拘留中だからパーティは実質解散状態になってるはずだ。



「それでは業務があるのでこれで失礼する。今後の活躍に期待してるよカイン君。スキルは使えないみたいだけど、私は君の努力を評価している。くれぐれも死なないようにな」



「ありがとうございます」



席を立ったジールニアさんはエルメニコさんとともに受付の奥へと消えていった。



「……カイン」



「ん?」



後ろにいたクルエラが裾を引っ張って呼んでくる。



「あの人、ちょっと強い」



「ああ、ジールニアさんは当時ラングラント王国最強とまで言われたSランク冒険者だったみたいだからね。やっぱり雰囲気でそういうのわかったりするのか?」



「……ん、大体見てればわかる」



「そうなんだ……」



強者は体の動きや癖である程度その強さがわかったりするというが、クルエラもそうなんだろうか。俺には全くわからないけど。



「あ、カインさん。ギルドプレートの再発行が終わりましたよ!」



受付から小走りでこちらにやって来るクレアさん。長い紫髪を靡かせながら、その大きな胸を上下に揺らしている。ふむ、いつ見ても素晴らしい光景だな。顔も可愛いから冒険者にも人気があるし、かくいう俺もそのファンの内の一人である。年齢も二十歳で俺より二歳ほど年上だ。歳が近いこともあって暇な時はよく話したりなんかしていたけど、その度にジルベルトに小突かれてたのを思い出した。



「それとクエラさん、こちらがギルドプレートです。詳細は後で説明しますが、その前に簡単な質問に答えてもらってもいいですか?」



「……ん、わかった」



ギルドプレートを手渡されたクルエラはその言葉に小さく頷く。



「出身国や種族はわかっているので、スキルを教えてください」



「……スキルは【血根犠牲ブリジッド】」



「ブリジッド……聞いたことないスキルですね。ユニークスキルだとは思いますが、能力はなんなんですか?」



「血の操作とその生命力を犠牲にしてあらゆる力を得る」



「なんか凄そうな能力……。吸血鬼の特徴に合ってそうな良いスキルですね」



「……ありがとう」



クレアさんの評価に僅かに微笑むクルエラ。一瞬ドキッとしたが、スキルによって身元がバレてることはなさそうだな。流石に神話の時代ってくらい昔の話だと正確な情報なんてないだろうし、これについてはあまり心配しなくても良さそうだ。

というか仕事上様々なスキルを見聞きする彼女でも【血根犠牲ブリジッド】については知らないのか。俺の【魂天入コンテニュー】と一緒でユニークスキルと呼ばれるものなんだろう。現在までに例のないスキルをユニークスキルと呼んでいるみたいだが、これに該当するものはほぼ全て無能にも等しい雑魚スキルと認知されている。稀に歴史の中で最強と謳われたスキルのように強いものもあるみたいだが、基本的には弱いイメージらしい。俺もその一片の可能性を売り込み、ダンネルさんの紹介で[龍を追う剣]に入れてもらったのを思い出した。



「スキル証明書はありますか?」



「あ、そういえばまだ教会で【解析アナライズ】してもらってないんですよね」



「わかりました。まぁ今回はカインさんもいるので免除してもいいでしょう。基本的には強大なスキルでもない限り必要としてませんから」



「そうしてもらえるとありがたい」



「後は簡単な説明をさせてもらいますね。まずはランクについて。これはFランクからSランクまであり、各ランクにはそれぞれ一定の昇級条件があります。また採集ランクについては討伐ランクに依存しているのでお気をつけください。クエスト中に負傷した場合、料金は発生しますがギルドに滞在している【小回復ヒール】所有者の治療を受けられます。ここまではいいですか?」



「……ん」



頷くクルエラを見て、クレアさんは再び説明を再開した。それからは税金のこと。能力が規定に達すれば魔王戦線に派遣されること。国家非常事態の時は国命軍に参加しなければならないことなど。そのほか重要な部分を解説していく。



「説明の義務があるのはここまでです。分からないところがあれば掲示板の横にある規約を読んでみてください。それと魔力紋の登録をお願いします」



クレアさんはクルエラが手にしているギルドプレートを指さしてそう言う。魔力紋とはその人の魔力の波長の事であり、一つとして同じものがないことからこういった個人認証などに多く使われている技術のことだ。これが普及してからは様々な分野に取り入れられ、特に商人や貴族に対して大きな貢献をしているらしい。

クルエラが魔力を流すとギルドプレートが淡く光り、刻まれた名前が浮かび上がる。



「これで登録は完了です。発行代として銅貨四十枚をいただきますね」



「ああ」



袋から銅貨四十枚を取り出してクレアさんに渡すとそのまま受付の業務へと戻って行った。気付けば冒険者たちの数も多くなってきてる。俺は渡されたギルドプレートを首にかけ、クルエラにも真似するように促した。

準備も整ったし、新たにクルエラという頼もしい仲間も増えた。パーティ申請は四人以上からしかできないけど、それも追追でいいだろう。

さぁ、後は依頼を受けて魔物を倒していくだけだな!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る