第7話 君の愛と哀を

「……死ぬかと思った」


「死にたくないのに、!」

「早く終わりにしたいよ、」

「どうしてこんなことになっちゃったの?」


「誰かここに来て!!」

「誰か——!」


一瞬、思って冷静になる。

もう、みんなが死ぬことが決まっているのではないかと。


そんな雰囲気は全くというほどではないけれど、ないに近い。

死ぬまであと何日なのだろうか。


でも、あの子が本当のことを言ってるのはよくわかる。

その隅に辛そうな顔が見えて、

聞かなきゃよかったって後悔した。


一度差し出された手を振り払ったら、

そう簡単に戻ってこない。


だから、あの子だって私たちを頼ってるはず。

助けてほしいという理由で、数百人が死んだ。


「ほ~らここに鬼さんいるよ」

「……へっ?」


「えへへっ」

「な、なんで……、」

「ここにいるの……、!」


「ついにここまで来れちゃったあ~」


「い、いやぁぁぁぁああああ!」


「どうして逃げるのお?」

「ほら、ここにいるのに。」


「なっ……、!」

家を出て警察に通報、

いや、それどころじゃない!!

逃げなきゃ、逃げなきゃ……!


「いつまで逃げるのお?」

「……はっ、」


いつまでもいつまでも逃げ切ってるけど、

おかしい。おかしい。


家の出口が、ない。


ドアが、見当たらない。

「君の愛を頂戴?」


初めて顔を見た。

女の子、だ。


「こんな鬼ごっこは終わりにしよ」

「私は君の愛を求めてる」


意味が分からなかった。

愛なのか、哀なのか、

どっちにしろ怖かった。


やはりこの子は鬼だと分かる。


歯が尖って八重歯。

ツインテールで目にハートが刻まれている。


可愛らしいとは思えない。

同じ女子同士だけど、

本当に可愛さがない。


なにか満ち足りないから、

愛を求めてくる。


どこか闇っぽい。


「ほら、」

不気味な笑みを浮かべて言う。


「逃げ切ったほうの勝ちにしてあげるからっ」


「アイツみたいに図太い雰囲気使うねえ笑」

「まあ、関係ないからいっかあ」


「その顔その顔!!」

「もうたまんなあい!」


「絶望に満ちた顔って最高だよね!!」

「こ、こないで、!」


「来ないわけないじゃ~ん笑」


「コッチニオイデ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る