第6話 ごめんなさい

「今日もみんな、逃げ切ってねえ!」

「ったく、昨日ここのことで通報があったの知らねえのかよ」


「なあに? なにか悪いことでもしたあ?」


「お前、鬼多いとか考えねえんだな」

「ほんと、なにさせてんだよ」


「ねえ、君たち——、」


「なにが鬼ごっこだよ!!」

「なんでここにわざわざ来なきゃなんないの!!」


「うるさいよお、みんな静かに——」


「こんなの子供じゃねえよ!!」


「私も最初子供遊びかと思ってたけど、」

「そんなことないじゃん!!」

「みんな、騒ぎ出さないで——、」



「馬鹿じゃないの」



冷たく冷え切った声が響き渡る。


「みんなちゃんと従ってるけど、従えなんて言われてない。」


「それに、あなたも考えるべき。」

「逃げ切った子いるわけ?」


「本当に願いを叶えられるかもしれない。」

「だけど、」

「普通こんなことしないと思うんだけど。」


「数百名もいたのにもう30人くらいしかいないことに、」

「焦りを感じてたりしないわけ?」


「なっ、!」


「ほら、言うならちゃんと言おうよ」

「……今まで、言ってきてたでしょう? 帰る時間になったら帰れって」


「あの時間、破ると死ぬからさ」

「え?」


「なんで言ってこなかったの?」

「だって、そんなの言ったら来たくなくなるかなと思って」


「だってじゃない!!」


「私たちは命がけでここに来てるの!!」


「なのにあなたはいつも軽々しく喋って、」

「いつの間にか隣の子が死んでて、!」


「あなたはいつも、いつも!」

「命を軽々しく見てる!!」


「知らないよ、そんなの。」

「4時までに帰ればいいだけの話でしょ。」


「……帰らなかったらどうすんだよ」

「シンプルなペナルティーだよ。」



「檻に閉じ込められて鬼に喰われる。」



「え」

ほぼ全員の声が揃う。


「ただそれだけ。」

「もう今日は帰って。」


「ほら、4時になる。」

「本当にごめん、1年間頑張って。」


「ちょ、!」

「……ねえ、帰ろう」


「うん」

「でも、帰ったところで変わんないじゃん」


「明日またここに来なきゃだよ」


「鬼さんどーこだっ」

「なに? またなんか用があるの?」


「鬼さん鬼さんこんにちは」


「……え、?」

「えへへっ」


「鬼さんここだよさようなら」

「みんな、逃げて!!」


「急ごう!!」

言われなくても分かる。


——4時が来た。


「あれだけ帰れと言ったのにねえ笑」


「話を聞かない子たちだなあ」

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